株初心者が知らない「株の正しい買い時、売り時」

発売開始からトレーダーや個人投資家から大きな支持を集めている話題の1冊『株トレ』60問のクイズを答えていくだけで、株取引のコツやタイミングがつかめる手軽さも人気だ。今回は『株トレ』の著者であり、25年のファンドマネジャー歴を持つ窪田真之氏に「正しい株の買い時、売り時」について話を聞いた。2000億円を超える運用をしてきた伝説のファンドマネジャーの「売買に関する哲学」は必読。インタビューの後半では「株式投資はギャンブルなのか?」についても、窪田氏ならでは考え方をたっぷり聞かせていただいた。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

株初心者が知らない「株の正しい買い時、売り時」窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト
1984年慶應義塾大学経済学部卒業、大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。

相場を先回りしようとする人は勝てない

――窪田さんは『株トレ』のなかでも、戦国時代の合戦や「孫子の兵法」の話題をよく出しています。「株の売買」と「合戦」は、どのようなところに共通点があると考えていますか?

窪田真之(以下、窪田):たとえば「風林火山」という言葉がありますよね。多くの人は武田信玄の旗印として認識していますが、もともとは「孫子の兵法」の言葉です。

 風のように素早く、林のように静かに、火の如く激しい勢いで侵略し、山のようにどっしりと動かない。「座右の銘は?」と聞かれたら、よく「風林火山」と答えていました。

 私のイメージでは株の「売り」「買い」は合戦でぶつかり合う両軍のようなものです。

 両軍が堅い陣地や陣形で向き合っているときは、下手に動くと戦局が不利になることがあります。あるいは、自分が相手に囲まれているときも、相手の挑発に乗って自分から動き出すと、たちまち負けてしまうこともあるでしょう。こうしたときは林のように静かに、山のようにどっしりと動かないことが肝心です。

 しかし、戦局がわずかに動いて、自分が有利な状況になったときは、風のように素早く、火のように激しく攻めなければなりません。

 それぞれの瞬間を見極めて、動くときは動くし、じっとしているときはじっとしている。これは株の売買にとても似ていると感じます。

 株式投資にも、どっちが勝つか(上がるか、下がるか)わからない状況が当然あります。そのとき何かしらの情報に踊らされたり、下手な予測をして動いてもいいことはありません。

 たまたまその予想が当たることもあるかもしれませんが、それは「悪い勝ち」。たまたま勝っただけで、再現性がありません。

 そんなことを長期的に繰り返していると、必ず負けてきます。