本場で学んだ
過酷な自然との向き合い方

 その後、英国の老舗スポーツブランドであるOMMがレースを運営するようになり、やがて日本へ上陸することに。OMM では山岳レース用のウエアを開発している。OMM JAPANが開催されたのは2014年からだ。小峰さんはイベントディレクターとして運営を任されることになったが、まずは本場のOMMレースに参加することとなった。

限界を試すアドベンチャーレース「OMM JAPAN」で見えてくる人間力

「本国の彼らがこう言うんです。『OMMのイベントに参加してみないと、我々というブランドが(山岳レースのための)ウェアを作っている理由がわからない』」

 ウェアやザックなどOMM製品は、過酷な山岳レースに耐えられる作りになっているが、その製品開発のヒントが、レースの中にあるというのだ。

「レースの内容なんてほとんどわからない状態で、本国のOMMに参加してみたのですが、もうカルチャーショックでした」とは、小峯さんの言葉だ。2日間にわたって開催される山岳レースは、山岳地帯のハードなコンディションに対応するための装備が必要であり、またそれらを背負いながら、時にはストームのような雨や雪の中を走ってフィニッシュを目指す。

限界を試すアドベンチャーレース「OMM JAPAN」で見えてくる人間力

 生半可な準備では、なかなか最後まで辿り着けないのも事実。走る体力、地図を読む力、冷静な判断、丈夫なギアと、必要な要素はひとつではない。すべてが揃っていなかった小峯さんは、道半ばでリタイアせずにはいられないほどに消耗し切ったそうだ。本場の山の中の過酷さにも驚いたが、リタイアをスタッフに告げてからも驚いた。

「日本的な考えでは『リタイア=回収してもらう』ですが、OMMは違うんです。スタートしたら、運営側のサポートは一切ありません。マーシャルと呼ばれる係員にリタイアしたいと伝えたんです。すると返ってきたのは、『そっか』の一言。そのときに悟りました。OMMに参加したからには、自分たちで最後まで何とかしなきゃいけないと」