「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
認知症は“回復が望めない”という事実
がんが早期なら完治するように、認知症も軽症のうちなら、治せるかもしれないと思う方も少なくないようです。しかし、それは誤解です。
認知症は進行性で不可逆的な(元に戻ることができない)疾患です。超がつく軽症でも進行を止めることは難しく、一度認知症と診断されると、残念ながら回復は望めないのです。
つまり、認知機能が正常な「正常認知機能」の状態には、二度と戻れないのです。そう考えると悲観的になりがちですが、だからこそ、認知症を発症しないことに、何より注力すべきだと前向きにとらえましょう。
見過ごされやすい軽度認知障害(MCI)
1990年頃から、認知症の前段階として、「軽度認知障害」(MCI)という概念が重視されるようになりました。
軽度認知障害というのは、認知症と正常認知機能の中間にあたるものです。要するに、「老化による生理的なもの忘れが少し進んだ程度」のものだと考えるとわかりやすいでしょう。
もの忘れなどの認知機能の低下は見られるものの、日常生活には大きな支障がなく、自立した生活が送れている状態です。軽度だからこそ、日常生活にも仕事にもあまり差し支えがないため、見過ごされやすいという問題点があります。
「軽度認知障害」から復帰することは可能
軽度認知障害から認知症へ移行する率は、年間およそ10%前後と考えられています。軽度認知障害の人が100人いたら、そのうち毎年10人前後は認知症になるということです。
ところが、逆に軽度認知障害と診断されたとしても、認知機能を回復させる努力をちゃんと続けていれば、「正常認知機能」に復帰することは可能だということがわかってきました。これは見逃せない朗報です。
ひと口に「軽度認知障害」といっても、その内容はさまざまです。そして、その中身により、認知症へ移行せず、正常認知機能に復帰できる割合も変わってきます。
【次回へ続く】 ※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。ぜひチェックしてみてください!