優れた組織に共通するゴールデンサークル

「WHY」を突き詰めることの重要性については、米国のマーケティングコンサルタントであるサイモン・シネックが2009年に著した『Start with Why: How Great Leaders Inspire Everyone to Take Action』に詳しい。

 アップルがなぜiPhoneを生み出し得たのかなどの多くの事例を通じて紹介しているので、最後にこのことについて触れておきたい。

 日本では2012年に『WHYから始めよ!――インスパイア型リーダーはここが違う』というタイトルで出版されており、TEDでの講演もネット上で話題になったことがあるので、ご存じの読者も多いかもしれないが、シネックが提示した「ゴールデンサークル」を改めて紹介する。

それでも電通「鬼十則」はゴミ箱に捨てるべきだ【書籍オンライン編集部セレクション】サイモン・シネック「ゴールデンサークル」©Lis Hubert/Simon Sinek
出典:https://spin.atomicobject.com/2016/02/15/asking-why-resources/

 シネックの議論は主に企業を始めとした組織のリーダーシップ論やコミュニケーション論に焦点が絞られているが、その考え方は極めて普遍的なものである。

 シネックは、優れたリーダーや組織には共通する思考や行動様式があり、ゴールデンサークルの中心から「WHY/なぜ」→「HOW/どうやって」→「WHAT/何を」の順で思考・行動していると説き、それが成功につながっているというのである。

 一方、一般の人たちはというと、「WHY/なぜ」について考えることはなく、ほとんどが「WHAT/何を」するかだけに留まり、良くても「HOW/どうやって」までしか考えられていないと手厳しい。

 そして、シネックはこの「WHY/なぜ」とは「信念」や「価値意識」と同義であり、組織で言えば、文字どおり「その組織が存在する理由」と論じる。

 まずは、「HOW」や「WHAT」だけの金科玉条を捨て去って、自社が存在する理由は何なのか? 自分自身が存在する理由は何なのか?「WHY」を自らに投げかけることが、私たちにとってのスタート地点になる。

 いかに「WHY」に対する答えを見極め、自社や自分自身の「存在価値」を見定め、定義した「存在価値」のもと、組織を動かし、自己を高めていくべきなのか、詳しくは『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』で書いているので、ぜひご一読いただきたい。

(この原稿は書籍『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)