小集団をつくってしまう
「残念なリーダー」

 距離が近いことは、こんな弊害を引き起こします。

 ある販売会社のリーダーの話です。

 そのリーダーは、日頃からよく社長の指示に反発していました。

 そこで彼がとった行動は、部下たちを味方につけて「小集団」を形成し、自分たちだけのやり方で勝手に仕事を進めることでした。

 社長を敵とみなしたことで、明らかに組織が分断してしまったのです。

 このようなリーダーは、よく現れます。

 組織の枠を外れてしまっている人が、その後、出世して権限を持ってしまうと、上に反発しながら仲間を増やすような態度を示します。

「自分たちを納得させないと、会社を辞めるぞ」ということを言い出す人もいます。たまに派閥に分かれて、会社が分社化したりすることがありますが、内部では、こんなことが起こっていたのです。

 社長の指示に従わないような管理職は、本来なら降格されるべきです。

 リーダーになった以上、上の指示に従いつつ、部下たちをマネジメントする責任があります

 その「位置」にいることを自覚しなくてはいけません。

 先ほどのリーダーは、辞めることをチラつかせながら社長をコントロールしようとしました。

 その上司である社長が、それに従ってしまうと、位置のズレが起こります。

 社長がとるべき態度は、毅然と「嫌なら辞めてもらっても構わない。ただし残るのであれば、私の決めたルールには従ってもらう」ということを伝えるだけです。

 識学を導入し、社長の意識を変え、「軸」をブレさせないようにしました。すると、最終的には、そのリーダーも退職を考え直し、ルールを守るように変化したそうです。

 もし、社長がリーダーの言いなりになってしまって、言うことを聞いてしまったら、他の社員はどう思うでしょうか。「言ったもの勝ち」になった瞬間、その会社は組織として終わります

 それぞれの「位置」を確かめることは、それほど大きなピンチからも組織を救う行為なのです。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。
2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。
2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。
人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年9月現在、約3000社の導入実績がある。
主な著書にシリーズ56万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)がある。