「まだ期待できる」維新の会が
取り込むべき支持層とは?

 維新は先日、代表選を実施し、馬場伸幸氏が新代表に就任した。初めて国会議員が代表に就任し、大阪を中心とした地方政党から全国政党への脱皮を目指している。

 ただし現在のところ、維新の全国政党としてのアピールは、自民党よりもラディカルな「憲法改正」「安全保障政策」などにとどまっている。

 改革を標榜(ひょうぼう)する政党なのはいいが、改革の中身は地方主権・行政改革・規制緩和という「90年代っぽさ」「古さ」を感じさせるものだ。自民党と異なる明確な「国家観」を構築できていないのも残念だ(第288回)。

 そんな維新の将来は、「政界の外」に存在する、自民党の「真の対抗勢力」を支持層として取り込めるかにかかっている。

 この連載では、現代社会では伝統的な「保守(右派)vsリベラル(左派)」の対立軸ではなく、新たな対立軸が生まれていると指摘してきた(第308回)。

 その中で自民党の「真の対抗勢力」といえる集団は、SNSで活動する個人や起業家、スタートアップ企業のメンバーなどである(第308回・p5)。

 彼らは今、市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとしている。そのため普段は、政治への関心が薄い。競争の「勝ち組」である彼らにとって、格差是正は逆効果になるからだ。彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパーグローバリゼーションを進めることである。

 しかし、彼らの活動は、時に「Too Little」「Too Late」「Too Old」な自民党政権に邪魔されることがある。前述した問題点によって、日本のデジタル化が世界に大きく遅れていることが、その代表例である。

 普段は政治に興味がない彼らだが、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する(第294回)。

 この前提を踏まえて大胆に言えば、維新は「右vs左」という古い対立軸の中で改革を訴えるのではなく、新しい対立軸に着目し、時代を切り開く人たちの政党となるべきである。

 維新にそれができず、自民党を政策的にけん引する野党が現れない限り、自民党の政策は諸外国に後れを取ったままとなるだろう。