肺がん患者の半数以上が喫煙者

 本来であれば早期発見で経済的にも精神的にも、肉体的にも軽い負担ですむのですから定期的ながん検診を受けていただきたいのですが、日本の検診受診率は30%~40%と国際的に見ても非常に低い割合にとどまっているのが現状です。

 肺がんの場合のがん検診は胸部X線検査と、主に喫煙指数(一日の喫煙本数×喫煙年数)600以上の人が受ける喀痰細胞診がありますが、それぞれに得手不得手があります。胸部X線検査は末梢型早期肺がんの発見に有効とされますが、中心型早期肺がんにはほぼ無効と言われています。一方、喀痰細胞診は中心型肺がんを見つけるのには適していますが、前述しましたように喫煙者に多く見られる中心型肺がんは肺がん全体の最大30%程度であり、男性の喫煙率でも30%ほどとなっていて罹患率も減少しています。

 肺がん患者の55%は喫煙者で、過去に喫煙歴のある人を含めると、患者の92.5%がタバコと関係しているという数字が出ています。肺がんの予防には禁煙が一番であると、前出の加藤先生も推奨しています。

 分かっているけどやめられない喫煙者。そんな方は、がん検診もどんどん進歩していて、ステージ0やステージIという早期発見も可能になっていますから、定期的にがん検診をぜひ受けてください。繰り返しますが、早期発見によって手術も簡単になり、体へのダメージも軽くなり、経済的にも負担が少なくなります。そしてなにより10年生存率が90%以上となります。かつて、がんは「告知=死」と恐れられました。

 ところが、抗がん剤やがん治療の進歩は目覚ましく、近年「がん全体の5年生存率は60%強」と言われるまでになりました。しかも、ある条件さえ満たせばほぼ90%は死なない病気になりました。ここでいうある条件とは「早期発見」です。早期発見して治療開始した症例だけを見ると、ほぼ100%に達しています。がんは早期に発見して治療すれば、延命ではなく、治癒できる病気になりつつあるのです。

 この連載では書籍『「がん」が生活習慣病になる日』から、「死なない病気」に近づけた条件の一つである部位別がん治療の最前線を紹介し、さらに二つ目の条件である「早期発見」のがん検診の最新情報も紹介していきます。