コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。

全世界へ分散投資する場合、為替ヘッジをどう考えるか?Photo: Adobe Stock

国際分散投資における「為替リスク」とは?

 国際分散投資を行ううえで、おそらく多くの人が「為替リスク」を気にすると思います。

 1ドル=120円だったのが、もし1ドル=90円になったら、いくら組み入れている米国株が大きく上昇したとしても、円ベースの収益は低下します。

 たとえば、ある米国株の株価が10ドルから12ドルに値上がりしたとしましょう。購入時の為替レートが1ドル=120円だとしたら、円建ての買付価格は1200円です。

 ところが、為替レートが1ドル=90円まで円高になったら、円建ての売却価格は1080円(12ドル×90円)ですから、株価が上がったとしても、このままでは売却損を被ることになります。

「為替ヘッジ」とは先物取引などを活用して、
円を事前に売っておく取引手法のこと

 では、為替ヘッジをしたらどうでしょうか?

 ヘッジとは「回避」のことで、このように円高が進んで、円ベースの収益がマイナスになることを防ぐため、先物取引などを活用して、円を事前に売っておく取引手法のことです。

 証券投資理論の教科書を読むと、「株式は為替の値動きも含めてリスクを取るべきだが、債券は為替リスクをヘッジした方が効率的な運用になる」などと書かれています。

 ただ、これは基軸通貨国であるアメリカ人の考え方とも言えます。

 果たして、それをそのまま日本で暮らし、円ベースで資産を運用している私たち日本人に直接、当てはめることが正しいのかどうかという点においては、疑問を持つ必要があるでしょう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。