ビジネスに必要な経済学、そして学問としての経済学の両方に関わっていて断言できるのは、社会人として知っておくべき、そして仕事や生活に生かせる経済学の知識は「全体の1%程度」に過ぎないということだ。
しかし、この1%を知っているかどうかでは大きな差がある。1%の経済知識は、あなたがこれから働いていく長いみちのりで欠かせない知識となる。本書は、この1%=エッセンスをわかりやすく解説していく。
経済学とは木を見て森も見ること
経済学の目的は大きく2つに分けられる。「人の行動」と「国の行動」の研究だ。
まず、人は商品やサービスを購入するとき、損か得かを考えて行動する(参考文献:第2章 注2)。また、住宅のような大きな買い物をするときには、将来の所得を想定して行動する。人は自分の人生にとって得になる行動をとるのだ。しかし一方で、他者の動向に反応して行動することも多い。
このような人間の複雑な行動を解明するのがミクロ経済学である。ミクロ経済学からは市場やビジネスの仕組みが見えてくる。
一方、国全体が何を選択し、どのように動くことが人々の最大の幸福に結びつくのか、このような大きな問題を解明していくのがマクロ経済学である。
マクロ経済学の最小限の知識を獲得すれば、政治・経済全体の動向や、毎日のように発表される統計の読み方、国内外の経済ニュースの個々の意味、それらと勤務先企業や産業界との関係、といったことがわかって
くる。
木の細胞まで見るのがミクロ経済学、木が構成する森林全体の生態系を知るのがマクロ経済学だ。ミクロとマクロの最小限の知識によって、あなたは生活でも仕事をするうえでも大いに助けられるに違いない。