自由民主主義の国は大幅に減少

――「30年ほど前まで、民主主義の前途は明るく見えた」とおっしゃいましたが、世界的にどのような変化が起きているのか教えてください。

岩本 30年前といえば、ちょうど米国の政治学者であるフランシス・フクヤマがベストセラー『歴史の終わり』を出版した頃です。ここでは、民主主義が人類の政治制度における最終形態であると述べています。当時は世界中にソ連の崩壊がセンセーショナルに伝えられ、フクヤマの考えに違和感を持つ人は少なかったのです。

 ところが、現在、民主主義の力は大きく失墜しています。民主主義について専門的に調査・研究をしているVーDem研究所の2022年のレポートによると、自由民主主義と区分される国の数は2012年がピークで、現在では1995年の水準にまで下がっていると公表しているのです。つまり、この10年間は民主主義が世界的に後退しているようなのです。

――自由民主主義が衰退したのであれば、どのような考え方が台頭しているのでしょうか。

岩本 VーDem研究所は、専制主義に区分される国の数が増加傾向にあると指摘しています。驚くべきことですが、現在では世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民であると分析しています。また、2021年は過去50年間の中で最も多くの国が専制主義に向かったと評しています。EU内ですら、ハンガリーやポーランドなど2割の国が専制主義に傾いているようです。