陽の当たる場所に移動し続ける
企業が成長できる

 リレーという陽の当たる場所で成長することができたが、ある時期から、リレー式は時代遅れになり、次の技術に取って代わられた。それなのに、某社はそこから動かなかったために、だんだんと衰退していった。推測の域を出ないが、実際には意識していて、変化を試みたのかもしれない。しかし、大きなチャレンジを聞くことはなく、やがて、大企業に買収され、その後は話題にならなくなった。

 対照的に立石電機は陽の当たる場所に移動していった。今の会社名をオムロンという。陽の当たる場所を探して、移動し続けた会社だと思う。もちろん、毎回成功したわけでもなく、電卓を作って、うまくいかなかったこともある。しかし、自動改札機や医療分野という陽の当たる場所を見つけて成長軌道に乗った。

 経営者は、常に陽の当たる場所を探さなければならない。それも、今の事業に陽が当たっている間にチャレンジを続け、今日の商品の事業環境が陰ってくる前に明日の商品が立ち上がっている必要がある。時間もかかるし容易なことではない。それでも、やらなければならない。やらなければ輝かしい明日は来ないのだ。この努力を怠ったがために、会社が衰退していったケースがいかに多いことか。

 マクニカは半導体の技術商社として、国内ナンバーワンの会社を目指してきた。そして実際にナンバーワンになれた。マクニカブランド、などという言葉を使う人まで出てきた。経営者として、それを耳にするのは誇らしいことかもしれない。しかしこのとき、私はむしろ危うい兆候なのではないかと警戒した。

 ひとつの成功が未来永劫、保証されるわけではない。世の中はどんどん変化していくし、陽の当たる場所も必ず変わっていく。ナンバーワンの地位に甘んじていることが、最も危ないのだ。