東大の授業で学生に失敗させまくった理由、やらかして成長「失敗学」の極意失敗に厳しい現代、失敗を前向きに捉える「失敗学」とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

おすすめポイント

「失敗したくない」というのは、誰もが心に持つ願望だろう。「やらかし」に気づいた瞬間、いてもたってもいられなくなってしまう。過去の失敗を思い出して叫び出したくなる。また失敗したらどうしようと不安にかられる――。そんな経験がある人は多いはずだ。

 失敗に振り回されずにすむ、何もかもうまくいく人生は、人類の夢といってもいい。だが、それは不可能だ。なぜなら小さなミスは避けられないし、「絶対にうまくいくこと」ばかり続けていたら、新しいものは生まれないからだ。

『やらかした時にどうするか』書影 『やらかした時にどうするか』 畑村洋太郎著 筑摩書房刊 924円(税込)

 本書『やらかした時にどうするか』を著した畑村洋太郎氏が提唱する「失敗学」とは、失敗しないための学問ではない。創造的であるために、失敗を前向きに捉えようとする学問だ。畑村氏は工学を専門とする研究者・技術者であり、大学で長く教鞭をとった指導者でもあった。自ら新しいものを創造し、また学生が新しいものを生み出せるように教える立場であるからこそ、失敗を恐れることなく物事に取り組む技術が培われたのだろう。そしてその技術は、工学を専門とする人のみならず、創造的でありたいすべての人の役に立つはずだ。

 現代は、次々に直面する未知の事態に対応していかなければならない時代だ。本書を読んで、小さな失敗から多くを学ぶ術を身につけ、取り返しのつかない失敗を防ごう。そうすれば、失敗を恐れず、どんどんチャレンジできるようになるはずだ。そして数々の「やらかし」を糧に、ますます成長していけるに違いない。(池田明季哉)