東芝の株式非公開化に必要とされる1兆円超の融資額などを巡り、銀行団の腹の探り合いが最高潮に達しつつある。どの銀行が、どのくらい融資するのか――。各行は、他行の動向を水面下で探りながら、自身の融資の実行額を詳細に詰めているところだ。今、銀行業界でささやかれる主要行の想定融資額とはいくらなのか。その実額を行名とともに明かすほか、銀行を悩ます“東芝融資”のネックに迫る。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
東芝買収に必要とされる融資「1兆円超」
銀行団の腹の探り合いがピークに
東芝の株式非公開化を巡る“資金集め”が大詰めを迎える中、資金の出し手となる銀行団による腹の探り合いが、最高潮に達しつつある。
非公開化を含む経営再編案に関し、東芝から優先交渉権を得ている国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)は、中部電力やオリックスなどの国内連合によって約1兆円の出資金を集めるべく目下、奔走しているところだ。
ただし、1兆円の出資金だけでは東芝の買収はかなわない。出資金に加えて欠かせないのが、融資や劣後ローンなどによる金融機関からのファイナンスだ。
東芝の買収総額は、11月11日に東芝が2023年3月期の営業利益見通しを1700億円から1250億円に下方修正すると発表したこともあって、流動的だ。だがそんな中でも、金融機関からの資金調達額は総額1兆円超の巨額に上ると目されている。
それだけに各行は資金拠出に慎重な姿勢を示すが、融資判断のプレッシャーは時間的にも世間的にも高まる一方だ。
というのも、物言う株主の外資系ファンドに翻弄される事態がこれ以上長引けば、「東芝の業績はどんどん沈んでいく。経営の迷走が続き、社員流出も止められない」(東芝関係者)からだ。
さらに東芝の非公開化に関しては、約20社もの日本企業が出資に動こうとしている。「銀行だけが金を出さずにいられることは、どのみちない」(金融機関幹部)というわけだ。
そのため、メインバンクをはじめとする各行は水面下で情報収集を行い、ファイナンスの総額とその内訳について“シミュレーション”を実行。それをたたき台に他行の動向を横目で確認しながら、自身の融資の実現性を詳細に詰めている。
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