子どもを守るべし!国内外から喫煙に対して「圧」
20年以上前から「受動喫煙は児童虐待」と訴え続けてきた、小児科医でもある齋藤麗子・十文字学園女子大学名誉教授が解説する。
「日本では児童虐待というと、暴力や恫喝などをイメージしますが、海外では親がたばこの煙を吸わせることも虐待だと判断をされています。例えば、親が子どものいる自動車内で喫煙することを罰則付きで禁じているのは、米国ではカリフォルニア州やオレゴン州など8つの州、オーストラリア、カナダ、イングランド、フランス、バーレーン、キプロス、モーリシャス、南アフリカ、アラブ首長国連邦など例を挙げればきりがありません。日本でも子どもの命を削り、健康を害する受動喫煙を虐待の定義に入れてもよいのではないでしょうか」
こんな話を聞いても、「海外で行われていることがすべて正しいわけではない!」と否定的な印象を抱く方も多いことだろう。
日本人は「ワールドカップで日本人のゴミ拾いを世界が称賛」みたいに外国人から褒められることは大好きで、そういうニュースを必死に拾い集める。しかし、「海外の文化や習慣からも学べることがあるよ」と言われるとなぜか途端に不機嫌になって、「日本には日本のやり方がある!」と閉鎖的になりがちだ。
ただ、日本が置かれている状況を冷静に見ると、そういう「我が道をゆく」みたいな路線もなかなか難しい。19年、国連の子どもの権利委員会は日本政府への勧告を公表した。
「委員会は日本で子供への虐待などの暴力が高い頻度で報告されていることに懸念を示し、政府に対策強化を求めた」(日本経済新聞19年2月7日)
このような「外圧」に加えて、今年6月には、「こども基本法」が成立した。同法の理念の中には、国や自治体は子どもの意見を政策に反映する仕組みをつくるように義務づけられている。これは喫煙者にとってかなりまずい。子どもの意見に耳を傾けると、「たばこの煙がいやだ」という意見が圧倒的に多いからだ。
例えば、山形市内の小学6年生、1753人に「近くでたばこを吸われたとき、そのたばこの煙をどう思うか」と質問をしたところ、1508人(86.0%)が「とてもいや」と「どちらかというといや」と回答した。
このように8割以上の子どもはたばこの煙は吸いたくないと思っている。しかし、この調査の中でも835世帯(47.6%)という半分近い子どもは、家庭内に喫煙者がいることがわかっている。つまり、日本には父親などのたばこの受動喫煙被害を受け、「臭い」「気持ち悪い」という言葉が喉まで出ていながらも、自分の心を殺している子どもが山ほどいるということだ。
こういう肉体的、精神的な「虐待」を受ける子どもの意見を政策に反映しないで、「子ども家庭庁」もへったくれもないではないか。