当面、世界経済の足を引っ張りそうな中国
今後、中国は世界経済を支えるのではなく、足を引っ張ることになりそうだ。中国の債務問題は深刻化するだろう。台湾問題の緊迫化懸念なども重なり、対中依存度の引き下げを急ぐ主要先進国の企業は増えている。中国本土から流出する資金は増加するだろう。
一方、共産党政権は先端分野の産業強化策である「中国製造2025」を推進する。半導体の自給率向上などを目指して、先端分野の研究開発や製造技術の向上などを強化している。
1990年代初頭のバブル崩壊以降、わが国は雇用の保護を優先し、結果的に産業転換が遅れて経済が長期停滞に陥った。先端分野の成長促進を重視する中国が、わが国のような停滞に向かう可能性が高いとは思えない。それよりも、資金流出が加速し、世界経済全体に「チャイナショック」と呼ぶべき衝撃が再度発生する展開が懸念される。
中国の不良債権問題は増加し、資本の効率性はさらに低下するだろう。それは韓国やわが国、ASEAN、ユーロ圏など世界中にマイナス影響を与える。その動きと同時に、もし米国の景気が想定以上に減速し、本格的な調整局面に入るようなことがあれば、「米中同時不況」が現実味を帯びる。世界経済は下支えを失い、株式などの資産価格の下落と急速な景況感の悪化が同時に進むだろう。
そうした懸念が高まる中、習政権が経済と社会に関する政策を大胆に変えることは難しいだろう。経済運営では「共同富裕」を進めつつ、社会運営では過度に共産党への不満が高まらないようにしなければならない。人々の目を国内から海外に向かわせるため、台湾への圧力を強めるだろう。結果的に、政策運営はさらなる隘路(あいろ)に向かわざるを得ないだろう。中国の政策運営が、世界経済の下振れリスクを左右すると言っても過言ではない。