悪化傾向に歯止めがかからない中国経済

 複数の要因によって中国経済の悪化が止まらない。22年7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比3.9%のプラスに浮上したが、10月以降は再び景気の減速懸念が高まっている。急速にコロナ感染が再拡大し、春先のような都市全体のロックダウンは行われていないものの、地域的なロックダウンは徹底された。

 その象徴的な事象が、河南省鄭州市のフォックスコン(台湾の鴻海精密工業の傘下企業)工場の労働争議だ。フォックスコンは世界のiPhone需要を満たすため、従業員に長時間労働などを強いてきたといわれている。その上に、ゼロコロナ政策による厳格な移動制限が加わり、従業員と警備員の衝突が発生した。生産は大きく落ち込んだ。強烈なトップダウンによる事業運営への不満は感染再拡大によって膨張し、抑えられなくなった。

 米国の年末商戦を迎える中で、ハイエンドのiPhone需要を取りこぼすと、中国の対米輸出は減少するだろう。暴動は社会心理も冷え込ませる。厳格な移動制限を見た人々は、これまで以上に防衛本能を高め、支出を抑制しようとする。飲食や宿泊、運輸業などへの減益圧力も強まる。雇用環境は一段と不安定化するだろう。

 不動産市況の悪化に歯止めがかかる兆しも見られない。住宅価格は下落基調だ。土地譲渡益の減少や税収の落ち込みなどによって地方政府の財政状況も悪化している。

 10月末、財政部(わが国の財務省に相当)はIT先端企業が集積する深セン市に、地方公共団体特別債の償還リスク上昇を抑えるために基金を設立するよう指摘した。内陸部の地方政府が直面する状況はさらに厳しいだろう。その結果、製造業・非製造業のPMI(購買担当者景況感指数)をはじめ、中国の主要経済指標は総倒れの状態にある。