SNS上で公然と拡散する民衆の不平・不満

 コロナ感染再拡大によって、中国では民衆の不安や不満が急速に表面化し始めた。共産党政権は政策運営の難局を迎えている。党大会前や会期中に比べ、状況は急激に変わっている。

 過去、中国では習政権を批判した企業トップは逮捕されてきた。また、独占禁止法の強化などによってIT先端企業は締め付けられ、SNSなどの情報統制も厳格化された。不適切な投稿は即座にネットから削除されてきた。ところが11月以降、ゼロコロナ政策に対するSNS上の批判は高まるばかり。「白紙運動」と呼ばれる共産党政権への批判や不満、不安が膨張している。

 習政権は人々の不満を軽視できなくなっている。そうしてついに、孫春蘭副首相がゼロコロナ政策を緩和する考えを示した。4月の上海市ロックダウンは、民衆の不満に直面した上海市トップの李強氏(当時の肩書は党委員会書記)に、孫春蘭副首相がゼロコロナ政策の徹底を指示したからだった。その人物がゼロコロナ政策の部分的緩和を志向せざるを得ないほど、民衆の不満が表面化している。

 言い換えれば、中国共産党政権といえども、SNSを経由した人々の結託を食い止めることは難しい。過去、世界ではSNS経由で人々が独裁政権に対する不満を共有した「アラブの春」が起きた。SNSを通して人々がつながり、共産党への批判が強まる展開に、習政権は一段と危機感を強めていると考えられる。

 人々が政治への批判や不満を強めれば、政策の効果は低下する。不動産市況の悪化など顕在化してきた中国経済の負の側面がさらに深刻化する恐れも増す。それが現実のものとなれば、共産党政権の求心力は低下せざるを得ないだろう。深刻な景気後退によって失業が増えれば、習政権に対する批判は激化し、経済と社会のコントロールのために多くのエネルギーが必要になる展開も排除できない。