戦術や選手の配置の状況から現在どのような局面になっており、なぜ最終的にそこにフリースペースができてしまったかを説明してくれる解説者と、最終局面でシュートをする選手に体を寄せられなかった選手の行為だけを指摘する解説者がいる。

 前者は、素人目には「なぜそこでもっと近寄らないんだ!」と最後のプレーに関係する選手に文句を言いたくなっても、“実際にはそのプレーのだいぶん前に、そうなるべく相手選手が仕掛け、その結果として、相手側にしかるべきフリーな選手が生まれてシュートにつながったのだ”と解説してくれるので、「なるほど!」と膝を打って納得するわけである。多くの元プロ選手が解説者として番組に参加しているが、その局面の解説能力は、現役時代の選手の地名度とは必ずしも比例しない形で個々に大きな差があった。

サッカー専門チャンネルの登場で
視聴者のレベルも上がっている

 他方、視聴者のレベルも相当上がっている。幸いなことに、有料チャンネルを契約すると欧州サッカーを普段から見ることができる。そこで見られるサッカーの戦術は、寄せ集めのチームで戦うW杯よりもさらに高度で洗練されており、また、そこにはそれらの戦術についてしっかり解説できる専門家たちがいる。

 そうした愛好家向けの放送に慣れていると、欧州のトップリーグで活躍する選手たちが連携してどのような意図でどのような戦術で相手をわなにはめにくるかをつぶさに見て知ることができる。どんな優秀な選手がいるか(Jリーグよりもはるかにスピードがあり、また多様な技術と、深い戦術理解力を持つ)、そして、それらの選手たちを優れた戦術の下に巧みに操る優れた監督たちがいて、それらが高いレベルでしのぎを削っていることを知るのである。

 たとえば、今回のW杯の日本戦で地上波の番組に、ファンを代表する立場で参加していたアイドルの影山優佳さんはそのような視聴と学習を通じた優れた観察眼を持っていた。そのコミュニケーションのあり方、選手たちへの尊敬の念も含め、試合に対するコメントは素晴らしかった。

 しかし、影山さんの観察力だけが特別なものではない。たとえば、Yahoo!のコメント欄などにも、ことサッカーに関しては、相当レベルの高い分析が載っていることには日々驚かされる。元記事の有名な解説者よりもはるかに高いサッカーIQを持っていることが推測される方もたくさんおられるのである。