旧時代のサッカー観から
脱却できない
また、多数の試合を見ていると、ほぼすべての選手にとって、特定の戦術には合うものの、まったく合わない戦術があること、周りの選手との相性や共通理解の重要性、優れた選手であっても自分の特色が生かせないチームや生かせないメンバーとでは成果が収められないことなども知るのである。だからこそ、戦術に合わせた選手を集め、うまく生かしていくことがとても重要になる。
その点では、技術レベルで過去のW杯よりもはるかに良い選手を使える恵まれた状態にありながら、彼らを上手に生かすすべを知らない(ように見えた)森保一監督に対する評価が到底高いものとはなり得なかったのもいたしかたないといえよう。
このような経験を重ねてくると、かつては名選手だったかもしれないが、現在の欧州リーグで活躍する選手の名前も、プレーの特徴もろくに知らず、最新の戦術を見極める眼力もなく、ただ昔の牧歌的なイメージで感想レベルのことを述べる(「俺の頃はこうだった……」等)解説者などまったく不要にしか思えないのである。
地上波のテレビ局がお得意である、「自称サッカー好き」のタレントを使って、プレーとは関係ない、選手のサイドストーリーに流れるような番組構成にせずとも、サッカーそのものをわかりやすくしっかり解説してくれれば、中身にも十分に興味を持つことはできる。
今回、本田圭佑さんの解説が高い評判を得たが、この数年に現役を引退した世代は、的確なサッカー戦術眼を持っているし、W杯のみならず海外リーグでの経験も豊富で、かつ専門サッカー番組が増えたことで、解説経験も積んで、わかりやすく語る解説能力にも磨きがかかっている。