口コミが炎上やトラブルを呼ぶ
「三つの理由」とは

 消費者と事業者の間で、口コミの内容をめぐる騒動はこれまでにもたびたび起きている。特に、飲食店や宿泊施設など事業者の顔が見えやすいサービス業界では時折、ネット上を中心にこうしたニュースが世間をにぎわせる。

 現実世界で意見や主張が食い違ったとき、私たちはよく「双方の言い分を聞いてみよう」となる。そして、両者の間に誤解が生じているのなら、客観的な事実を伝えて誤解を晴らしていく。商品やサービスの信頼に関わる問題ならなおさらだ。言葉を尽くした、丁寧なやりとりが必要になる。

 だが、インターネット上の口コミの世界では、それがなかなか難しい。要因は主に三つある。

 1点目は、口コミの多くが匿名で、直接やりとりするのが難しいこと。特に、食べログのように事業者が口コミに直接返信する仕組みがない場合には、第三者を介して投稿者と向き合わざるを得ない。これが、さらなる誤解や不信感を招くことがある。

 2点目は、言葉の使い方や選び方によって、情報の「受け手」と「送り手」の間に齟齬(そご)が生まれやすいこと。特に、口コミのように何かを評価する場合、断定的な物言いや鋭い口調が消費者と事業者の間に深い溝を生み出してしまうことがある。

 さらに難しいのが、口コミには事実と投稿者の主観が入り混じることがある点だ。情報の読み解きが複雑になりがちなことも、対話のハードルを上げてしまう要因の一つだ。

 こうした現状もあって、最近ではグルメサイトから距離を置く人が増えつつあるとのデータが発表されている。TableCheck(テーブルチェック)が2022年6月に実施した「グルメサイトに関する意識調査」では、グルメサイトを「あまり信頼していない」「まったく信頼していない」と答えた人の数が2年前に比べて1.2倍に増えていた(回答者数1100人)。

 とはいえ、口コミが消費に与える影響は依然として大きい。GMO TECHが2021年11月に実施した「Googleマイビジネスのクチコミの信用性(信憑性)について」の調査では、「行く予定の店・クリニック等を、クチコミを見てから変更した事はありますか」との質問に53.4%が「ある」「どちらかと言うとある」と答えている(回答者数940人)。

消費者が口コミと付き合う上では
「複数の情報ソース」で判断すべきだ

 匿名の口コミは誰でも簡単に書ける。口コミがすべて事実であるとは限らないことも、サクラレビューがあることも私たちは気づいている。なかにはサービスや商品を利用したことがないのに、面白半分で事実無根の書き込みをする人がいることも頭では理解している。

 それでもつい、口コミを気にしてしまうのが消費者のさがだ。口コミや評価の信憑(しんぴょう)性に疑問を抱きつつも、評価が低いところには「何か問題があるのでは」と思ってしまう。