「製造工程はビールとほとんど同じ。しかし、ホッピーは0.8%という低アルコール度数に抑え、低カロリー、低糖質、プリン体ゼロのヘルシードリンク。原料にもこだわっており、麦芽はカナダ産とドイツ産、ホップはドイツ産、水は秩父山系の天然水を使っています。麦汁の濃度、使用する酵母の種類、発酵時間の調整など秘伝のノウハウは企業秘密。製法特許も取得しています」(石渡社長、以下同)

 来年、発売以来75周年を迎えるホッピーは、東京の下町からアメリカへと羽ばたこうとしている。コロナ、ウクライナ情勢、原材料価格の高騰などが予断を許さない状況の中、なぜここにきて海外進出なのか。先に結論を伝えよう。狙いはホッピーの“新たなストーリー”の展開によるブランド力の強化だ。

社長自ら広告塔となり
ストーリーを発信

 サッポロ、キリン、アサヒ、サントリーをはじめ、競合他社にはそうそうたる顔ぶれの巨大企業が並ぶ。そんな中、ホッピービバレッジの特徴は、経営者自らが広告塔になっている点だ。

 中小メーカーである同社は、大手他社ほどの広告宣伝費をかけられる体力もない。また、タレントをイメージキャラクターに登用するにしても、不祥事やスキャンダルなどのリスクもある。そこで、社長が広報も兼任すれば、宣伝費を浮かすことができるし、不祥事やSNS炎上などもある程度コントロールできるとの理由からだ。

「去年、ラジオ番組『看板娘ホッピー・ミーナのHOPPY HAPPY BAR』(ニッポン放送)はおかげさまで放送4000回を迎えましたが、目指すは8000回。また、米アカデミー賞公認の国際短編映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア』ともコラボし、ホッピーが掲げる『Be HAPPY with HOPPY』の思いを体現するショートフィルムに対する『HOPPY HAPPY AWARD』を設けるなど、映画を通じた発信にも力を入れています。他にもSNSやユーチューブ、ブログ、書籍などのクロスメディアを活用して、ホッピーの魅力を伝えていきたいです」

 大手競合が並み居る中、中小企業であるホッピービバレッジならではの強みをどう見いだすか。その一つの答えが、ストーリーテリングを活用して、さまざまなメディアで発信していく戦法だった。ストーリーテリングとは、伝えたいコンセプトを物語仕立てにしながら引用するマーケティング手法だ。

 具体的に、ホッピーには3つの大きなストーリーがある。一つ目は「出自」だ。