「片づけで特に困っていない」
と断言する親の本音をつかむ

 どう見ても問題が山積みの家で、「片づけなくていい、必要ない、困ってない」と言われると反射的に「そんなわけないでしょ!」と言いたくなるものですよね。でもこれ、家族間の片づけコミュニケーションではよくある反応です。

 私自身も整理収納の現場でもよく、ご家族からの伝言として「特に困っていない(から、自分のエリアは何もしなくてよろしい)」というメッセージを頂戴します。作業に入る前に、本音をつかんでおく必要があります。その本音とは何でしょうか?

●予防線を張っている
「困っている」と言ったが最後、子世代の誘導・説得に乗せられるのを恐れて予防線を張っていることがあります。「そうでしょう!? この家はモノが多すぎるんだよ。お母さんひとりなのに、こんなに鍋も食器も要らないよね? 洋服もタンスに入っているやつ、全然着てないじゃない」などと子がまくし立てれば、親も「下手なこと言わなきゃよかった」という気持ちになってしまいます。心当たりのある方は要注意です。

 実家の片づけは、「決定権は親に委ねる」が鉄則。押し付けられるのは誰だって嫌なものです。親が「自分で決めた」「意向を尊重してもらえた」と実感できるような進め方をしないとうまくいきません。強引に片づければ、終わった後にゴミ袋を開いて「これはまだ使える」とモノを元の場所に戻してしまう可能性もあります。

●片づけても今の生活でメリットがない
 古い一軒家で、もう使われてない子ども部屋に、不要な家具や正体不明の荷物が詰め込まれているのを見たことがあります。空間はすさんでいましたが、「2階はほとんど使ってないから」とあっさりスルーでした。確かに、実生活で困ってはいなかったのでしょう。

「今の生活に関係のない片づけ」は「今、この場で解決しなくちゃ」という気持ちになかなかなれないものです。過去の子ども部屋の後始末はもちろん、「いつか足腰が不自由になっても危なくない居間にしよう」のような「未来を見据えた片づけ」もそう。親自身の危機感がリアルでない限り、「今すぐ慌ててやらなくてもいいか」といった気持ちになりがちです。若い世代で言うなら、「将来の子ども部屋だから今からきれいにしておこう」と思っても物置化してしまうのと同じです。