本書の要点

(1)「夢」には、ものごとの「意味」を変えてしまう力がある。「夢」を持つということは、「人生が輝き出す」ということである。
(2)「夢」を見つけるためには、自分自身を掘り起こすことだ。周囲の期待や見栄によって見失っていた、自分の本当の感情を呼び覚ますことが重要だ。
(3)「夢」は、自分と同じ痛みを持つ他者を救うことで自分を救うことである。「自分への愛」と「他者への愛」が交わったときに表れる思いが“本物の夢”であり、それを持ったときに人は自分の最高を引き出すことができる。

要約本文

◆ガネーシャ、降臨す
◇パワハラ課長から助けてくれたのは、ゾウの顔の神様だった

 3カ月前に部署に配属された課長に、主人公はあからさまに目をつけられ、理不尽な扱いを受けていた。気が弱く、抵抗することもできない主人公は、会社に向かう途中で激しい動悸や蕁麻疹に襲われるまでになっていた。毎日、今日こそは会社を辞めるぞと決意し続けているものの、いざ課長を前にすると、それを口にする勇気がなくなってしまう。会社を辞めてしまって本当に生きていけるのかという不安もあり、主人公は課長の顔色をうかがいながら鬱々とした日々を過ごしていた。

 そんなある日、主人公は軽妙な関西弁を話す会社の清掃員に声をかけられる。その親しみやすさに主人公が思わず自分の心情を吐露すると、清掃員は「生きる上で一番大切なことは、本当につらいときに『助けて』と口に出して言えることやねんで」と語る。そして、退職を決める前にまずは「相談」してみてはどうかと促す。

 この言葉に勇気づけられた主人公は、意を決して課長に現在の自分の苦しい心境を打ち明けるが、「うつになるやつは周囲の迷惑を考えていない」「トラブルを起こして辞めると次の就職も決まらない」と課長は責める言葉ばかりを口にする。退職という逃げ道まで断たれたと感じた主人公は、涙を浮かべ謝るばかりだ。

 突然、先程の清掃員が乱入する。清掃員は部下の気持ちをないがしろにする課長を罵倒しながらゾウに姿を変え、長い鼻で課長を締め上げ、何度も壁に打ちつけた。

 その姿を見て、主人公は清々しい気分で会社を辞めることを告げた。