◆ガネーシャの課題 自分自身を取り戻す
◇なんで、こんなに好きなものを忘れていたんだろう
ガネーシャの最初の課題は、「日の出を見ること」。主人公がわけもわからず、早起きすると、そこには見る者を圧倒する美しい景色が広がっていた。早朝は誰にも邪魔されない時間だ。“本物の夢”を持つ人間が何より大事にしているものは「自由」だとガネーシャは語る。主人公は広い世界を見て、いつもよりも少し、清々しい気分で朝を過ごした。
次の課題は「好きな匂いを見つけること」。好きな匂い探しをしているうちに、主人公は子どものころいつも優しくしてくれたおばあちゃんが、近所の駄菓子屋にもんじゃ焼きを食べに連れていってくれたことを思い出す。もんじゃ焼き屋に入り懐かしい香りを嗅ぐと、心から「いい匂いだ」と声が漏れた。この課題は、「自分が本当に好きなこと」を見つけるためのものだった。主人公は、周囲の目を気にするあまり、好きだったはずの食べ物から長らく遠ざかっていたことに気づいたのだった。今後の生活では自分の「好き」を大事にしようと決意すると、それだけで胸が高鳴るのを感じた。
◇嫌なことを断る
ガネーシャと主人公が親しくなるのが面白くないバクは、鞄に忍び込み、会社についてきてしまった。何事もなく仕事を終えられそうだと安心していた終業時刻間際、主人公は課長に声をかけられる。今日はこのあと経営コンサルタントのセミナーがあるからスケジュールを空けておけ、と言うのだ。課長の言葉に、主人公はガネーシャの課題を実行することを決めた。「すみません、お金がないんです」。
ガネーシャの課題は、「『お金がない』と言って断る」ことだった。課長の顔は怒りに満ち、不機嫌に主人公を罵り始めた。自己投資ができないのは地頭が悪い、だいたいそのスーツはシンプルにダサい、そんなスーツを着ているお前を誘ってやってるのに普段何に金を使っているんだ。胃の奥に刺すような痛みを感じた主人公が周りを見渡すと、同僚たちの視線はパソコンに注がれていた。本当の苦しみは、助けてくれる人が誰もいないことなのかもしれない。
そこに現れたのは、セミナー講師である経営コンサルタントに扮したガネーシャだった。ガネーシャは課長を会議室に誘い出し、叱責から主人公を救い出してくれたのだった。
◇実物に触れよう
変装を解いたガネーシャ、この近くで一番夢がある場所へ行くと言い出した。行き先は競馬場だ。
競馬に良い印象を持っていなかった主人公だったが、実際に触れるうちに夢中になってきた。懸命に走る馬の姿は感動的ですらあった。自分が最後に必死になったのはいつのことだっただろう。思い切って飛び込むことで得られる楽しさもある。本当に好きなものを見つけるためには、「自分の中にあるものを『掘り起こす』こと」「と、「新しいものに『出会う』こと」の2つが必要なのかもしれない。