とはいえ「犬肉食」「犬焼酎」の事件も起こっている

 このように、約9割の人が「もう犬肉料理は食べない」と思っていても、韓国ではときどき犬にまつわる事件が起こっている。2018年には隣家が飼っていたウェルシュ・コーギーを殺して、その肉を飼い主に食べさせようとした男性がいた。

 2017年には行方不明になった子犬が「犬焼酎」になって帰ってきたというニュースもあった。犬焼酎とは、犬肉とクリやナツメなどの食材や漢方薬などを入れて煮込んで成分を抽出した薬用飲料のことだ。余談になるが、日本でも名が通っている俳優の權相佑(クォン・サンウ)も、母親お手製の犬焼酎を愛飲していることが過去に報じられている。

 つい最近までこういった事件が発生しているくらいだから、犬が「家族」というポジションを得つつあるといっても、このような認識はまだまだ過渡期と言えるだろう。

自国の食文化を守ることも大切なのでは

 韓国以外にも、犬肉は中国やベトナムでも食されている。なかでもベトナムでは犬肉はごちそうとされており、年間およそ500万匹が食べられているそうだ。

 筆者は犬肉を食すことに賛成の立場である。この世に生を受けた犬の命を大切にしようという気持ちは十分理解できるが、食文化を守ることも大切と考えるからだ。殺すのがかわいそうだと言い出せば、牛や豚、鶏、魚といったありとあらゆる生き物を、我々人間は食べられなくなってしまう。

 時代の流れに順応し、法で犬肉を規制することも一つの方法だが、それは選択の自由を奪い、歴史がある食文化を自らなくすことにならないだろうか。他国からの目を気にすることも大切だが、韓国人はもう少し自国のアイデンティティーを尊重してもよいと思う。一度失った食文化を復元させることは難しいのだから。