フリーランスの中には、浮き沈みが非常に激しい職業もあります。たとえば作曲家や小説家、フリー編集者、ライターなどです。

 こういう人たちは、売れるときは非常に大きな収入を得ることができますが、そうでないときは非常に低い所得となります。急に売れたら莫大な税金がかかるけれども、将来の保証がないので、不公平感があります。

 その不公平感を解消するために、所得の変動の大きい業種の人には、特別な税金の計算方法があるのです。それが「変動所得の計算」です。

 変動所得の対象となるのは、原稿料、作曲の報酬、著作権による所得、漁獲、のり採取、養殖(はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、又は真珠)による所得です。

 この「変動所得」は簡単にいえば、急に所得が増えた場合は、過去3年間の平均所得をベースにして、その平均を上回って増えた所得は、5年で振り分けたことにして税率を決めましょうというものです。少しややこしいので、具体的な例を挙げましょう。

 過去2年間は、平均150万円の所得しかなかったライターが、今年は急に売れて600万円の所得があったとします。つまり例年の4倍も所得が増額したわけです。

 増額分450万円を過去5年に振り分けると、1年あたり90万円の所得増になります。つまり税務計算上、この人の5年の平均所得は240万円ということになるのです。所得が240万円では、所得税率は10%です。

 そのため、今年の所得税は、この10%の税率でいいというものです。その結果、600万円の所得に10%の税率をかけ、9万7500円の控除をした金額50万2500円が、この人の所得税になるのです。

 所得税は累進課税になっているので、通常は600万円の所得があれば約80万円の所得税がかかります。しかし、この変動所得の計算を利用すれば、30万円も所得税が安くなるというわけです。

 この「変動所得の特例」は、所得の増加が大きい人ほど、そのメリットは大きくなります。

 筆者はライターという仕事をしています。ライターというのは、大ヒットを出すなど売れ出すと突然、莫大な金が入ってくることもあります。ライターの中には、税金に頭を悩ませている人も多いようです。

 だから印税で収入を得ている人は、要チェックの節税方法です。

 またこの方法は、その年が終了した後、申告書の作成過程で行える節税方法です。

 つまり、ライターなどの人が、今年だけ急に売れて、節税策を何もしてなかった、どうしよう、という場合でも、この変動所得の特例を使えば、税金が安くなるというわけです。