大手回転ずしチェーンの値上げで変わる勢力図
それぞれの客層はどこへ行く?

 これまで、大手回転ずしには、「安さ」を起点として、家族連れや若者、ビジネスマンなど、さまざまな客層が来店していました。そこには、無茶な競争の末にもたらされていた圧倒的な「安さ」があったといっていいでしょう。しかし、実質的な値上げによって他の業態との差が縮まり、その安さは圧倒的ではなくなってきています。

 大手回転ずしに安さやコストパフォーマンスだけを求めていた層は、そもそもすしでなくてもいいのですから、ハンバーガーや牛丼などファストフードを中心とするお店へ流れていきやすい状況になっているといえます。

 もちろん、大手回転ずしが値上げに至っても、元々持っている強みは残ります。その強みとは、さまざまな好きなネタを楽しめることであったり、すしをみんなで気軽に楽しめる場であったり、いつも同品質のネタが楽しめることだったりと多様です。それらは今後、もっぱら家族連れの普段の食事や、若者の特別な機会の食事の際に向いている、と捉えられそうです。無理のない価格で、安価すぎないファミレスなどを求める層に働きかけていくことが勝ちパターンになっていくかもしれません。

 一方で、大手回転ずしをお昼休みに利用していた時間のないビジネスマンたちで、それなりにおいしいものを食べたい層にとっては、立ち食いすしはますますフィットするようになってくるでしょう。もちろん、他のすし業態やすし以外の飲食店を求める層もいることでしょう。

 2023年、値上げにより大手回転ずしに集っていた客層が、それぞれに食の場を再考し始めています。それを受け、すし業界では、対象になる客層に向けたすしの提供方法がよりハッキリしてきそうです。

 今やすしは、世界に誇る食文化となりました。これからも、無理のない形で発展し、多くの人々を満足させていってほしいものです。