慢性疲労と慢性疲労症候群は別物

 現代人は常に疲れているのかもしれません。しかし、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」はこのような慢性疲労とは全く異なります。厚生労働省の診断基準では、休んでも疲れがとれず、かつ、その状態が6カ月以上続いた状態が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群です。

 慢性疲労なら3日も休めばたいてい元気になるでしょう。しかし、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群では十分な休養や睡眠をとっても回復しません。疲労のレベルも日常生活を送れないほどで、また、疲労以外にも微熱や、筋肉痛・関節痛、睡眠障害、記憶力の低下、鬱などさまざまな症状をともないます。患者さんによって現れる症状が異なり、さらにその病状の個人差も大きい難しい病気です。

 原因はわかっていませんが、研究の結果、患者さんの神経、免疫、内分泌の機能低下がおこっていることがわかっており、とくに「司令塔」である脳の機能低下によって、病気の多様な症状が引きおこされていることがわかってきています。

慢性疲労症候群は、実は身近な病気

 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群は約37万人が罹患しているとされ、あらゆる年齢層に見られます。平均発症年齢は30代、最多年齢は40代。女性のほうが男性よりも有病率が高いです。

 私のクリニックでも、新型コロナウイルス感染症に感染したあとに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群になって来院される方が急激に増えていて、関連が取りざたされています。

 この2つの関連はいまだ解明されていませんが、コロナウイルス感染症による全身的なダメージの一環として、脳機能の低下がおこっているという報告が相次いでいます。

 私が診る限り、この病気の患者さんの多くが、発症する前に働きすぎたり、がんばりすぎたりして過労状態に陥っていました。過労はこの病気の引き金です。