では、実際は、どのようにして学生が就活を進めているのか。
今やほとんどの学生は企業のHP、就職情報サイトを会社選びの参考にしており、SNSも積極的に活用されています。前回もお話したとおり、同級生には聞きづらいことをLINEのオープンチャットなどで情報交換する人が多くなっています。
ただし、実際に学生と話してみると、コロナ禍の反動もあるためか、企業や就活仲間とのリアルのコミュニケーションを再評価する動きも見受けられます。「偶然の発見がある」「企業の熱量に触れられる」などがその理由で、コロナ禍で遮られていたリアルな関係性への「飢え」も感じられます。いずれにせよ、コロナ禍が落ち着いた後もオンラインとリアルの使い分けは続くでしょう。
保護者世代とはこれほど違う
経済・社会状況
次に、時代背景や環境変化に視野を広げ、保護者世代と子世代の違いを考えてみましょう。
まず、マクロデータで見たときに、保護者世代と子世代では大学の進学率や就活時の経済状況が決定的に違うということは踏まえておくべきでしょう。たとえば保護者世代が大学生だった1988年の大学進学率は25%、全体の4分の1程度でした。2021年には54.9%と、半数以上が大学進学する時代になっています(出典:文部科学省学校基本調査)。
また、1974年から1990年度の経済成長率の平均値は4.2%でしたが、2004年から2020年度の平均値は0.37%と圧倒的な差があります。大卒求人倍率もその影響を受け、リクルートワークス研究所の調査では、1992年3月卒では2.41倍でしたが、2023年3月卒では1.58倍です。現在も1.5倍を超えており、学生にとって優位な状況ではありますが、保護者世代の当時と比べれば、求人倍率は大きく変わっています。
日本の産業構造の変化と共に、学生の人気業種も様変わりしました。1993年度には、大学生の就職先業種は製造業が26.1%、サービスが25.4%で、第二次産業と第三次産業に大きな差はありませんでしたが、2021年度は製造業が10.1%、サービス業が35.6%と、後者が3倍以上に増えているのです。(出典:文部科学省学校基本調査)就職先が変わっているため、保護者世代から見て子の就活先が「知らない業界・会社」と映るケースが多くなっていることは意識しておくべきでしょう。
さらに、社会構造も変わりました。男性のみが雇用労働者である世帯数と共働き世帯の数は逆転し、特に2000年以降はその開きがより大きくなっています。以前は「男性は仕事、女性は家庭」という男女の役割分担が顕著で、世帯としてワークとライフのバランスを図っている家庭が多かったと思われますが、現在は、働き方の変化に伴い、男女での役割分担ではなく、個人でワークライフ・バランスを考える時代の新しい働き方の設計が必須になっていると考えられます。