他方、高度経済成長期とは違って、現在は先の読めないVUCA【Volatility (変動性)、 Uncertainty (不確実性)、Complexity (複雑性) 、 Ambiguity (曖昧性)】の時代だとも言われます。安全・安心・安定を1つの会社だけに求めることに、不安を感じる個人も増えてきています。大手企業のトップも「終身雇用は限界だ」と発言しています。

 また、保護者が働いている姿を見て、今の時代に安定的に働くことの大変さを子の世代もよくわかっています。子の世代は一つの会社に頼り切るのではなく、先が見通しづらい世の中でも変化に対応できる力をいかに身に付けるかを重視していますし、企業も「そういう力を身につけられる職場だ」とアピールすることで優秀な人材が集まるという関係性になっているのです。事実、学生が企業を選ぶ基準として、「自らの成長が期待できる」ことが第1位になっていることからもそれは明らかです。

いかに成長機会を与えられるかが
新卒採用のカギになる

 なお、それと同時にコロナ禍では「働きやすさ」に関しての注目が高まりました。「職種が希望と一致している」など若者が持続可能性を重視する傾向が強まっています。「人生=仕事」ではなく、「仕事は人生の一部」と捉え、全体的なワークライフ・バランスを考えて仕事を選ぶ人が増えているのです。

 これは、市場成長期と飽和期の違いとも言えます。企業が個人に求めるものと、個人が企業へ求めるものが変わってきています。個人はますます働きやすさとやり甲斐を重視するようになっています。現にある調査では、働きやすさとやり甲斐を縦横の軸にとって、企業を4つの象限にマッピングすると、働きやすくてやり甲斐がある象限に当てはまる職場の売上高の対前年伸び率が、他の3つの象限の職場をはるかに上回っていました。

 その意味では、個人が自分の成長機会がある企業を選ぶように、企業は人の可能性をいかに引き出せるかが、これからの成長のカギと言えます。政府も人的資本経営に言及し、人的資本という言葉が注目されていますが、これは自然な趨勢です。

 以上が、保護者世代と子世代の経済状況や社会環境の大きな違いです。保護者の皆さんは、「自分たちの就活していたときとはこれほど状況が違うのだ」ということを頭に入れて、お子さんの就活を見守ってあげてほしいと思います。

 次回は、お子さんの就活に際して保護者がやっていいこと、やってはいけないことについてお話します。

(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥、まとめ/ライター 奥田由意)