その対策として、パーパスの設定や経営理念の再解釈をし、われわれは社会に対してどのような存在であろうとしているのかを明確にし、従業員に対して自分たちの存在意義を語っていこうとする会社が増加するであろう。従業員に対して、理念的なインセンティブを与えて働くモチベーションを高めようとするのである。その設定や再解釈のプロジェクトに従業員を巻き込もうとし、管理職層は1on1ミーティング他、あらゆる場面でこれらの理念を現場に落とし込む役割を担わされることになる。

 一方では、もっと乱暴に、コロナ前と同じように、毎日出社することを義務付け、強制的に職場にいる時間を増やすことを通じて、会社や仕事のマインドシェアを高めようとする会社もあるだろう。

 こういった会社側の動きに対しては、素直に賛同できる人もいるが、多くはついていけないと思うことであろう。

 やっと会社や仕事のマインドシェアを下げて、それらをワンオブゼム化できたのである。通勤時間も減って、ずいぶん時間を有意義に使えるようになり、外部のさまざまなことにも目が向くようになったのだ。会社と自分は、仕事を通じてのみつながっておればよく、全人格的に組織に巻き込まれたりすることは不要である。たとえば会社の理念など自分の人生にとってはさして重要なことではないのである……。このように自覚してしまった人は多いはずだ。

 そういう人はなかなか元には戻れないだろうし、戻りたくないと思う可能性は高い。そうなれば、会社や職場と個人の間での価値観の違いが顕在化することになろう。これまで中枢の社員と思われていた人たちの中においても、組織と人の大きなシャッフル(転職など)が増加することになると考えられる。

 ちなみに、会社はどうするのかといえば、基本は出社でただし週1~2回はリモートワークでよいことにするか、逆に基本はリモートワークでよいが、チームで議論をするために最低週1くらいは出社日とする、といったあたりにとりあえず落ち着く会社が多くなるだろう。