スタートは「経済」ではなく「人」

「あかん、これで明石は終わった」。11年前の市長選にさかのぼります。開票会場で私の勝ちが確定した瞬間、相手陣営の立ち合い責任者がこぼした言葉です。

 就任直後には、市の財政担当に告げられました。

「明石市は赤字財政で、どんどん基金が減っています。現時点で70億円残っていますが、40億円以下には減らさないでください」。

 調べてみると、阪神・淡路大震災の1995年には162億円。わずか15年で、半分以下に減っていたのです。

「何言うてんねん。減らせへん、増やすから」。

 そう言うと、「はあ?」とあきれた反応をされました。

 市民だって「ふざけた市長や」「高齢者いじめて子どもばっかり」と、言いたい放題でした。誰もが、私が市長になると「景気が悪くなる」と思い込んでいたのでしょう。

 子どもが大人になるには、最低でも18年かかります。「子どもへの投資は、株や為替みたいにすぐには回収できない」と言われてきました。

 それでも私を選んだ市民と、ふるさとである明石の未来のために。まず「子ども」から施策を積み重ねていくと、その効果は想像以上に早く表れました。

 毎年1000人減ると予測されていた市の人口が、増加に転じるまで、わずか2年。

「やっぱり」との思いでした。

 これまでいかに日本が子どもを支援してこなかったか、明らかだったからです。

 人が増えれば、地域も賑わいます。今では飲食店の店主も「いや市長、子どもはええわ。大事や」と寄ってきます。「あれほど嫌がっていた娘が、孫を連れて明石に帰ってくる」と喜んでいます。「10年前何言うてました?」と突っ込みたくもなりますが、まぁいいでしょう。

 マンションの建設ラッシュが始まると、公共事業費を大幅にカットしたことから根強く市政に反対し続けていた建設業界も、本来の民間需要で潤い出しました。

 就任時に70億円だった市の基金も、2021年には121億円に。50億円以上増やしました。最近では、当初に思い描いた以上のことも起き始めています。

「住みたい自治体ランキング関西版」では、2018年の24位から毎年順位を伸ばし、2022年には6位にランクイン。「全国戻りたい街ランキング2021」では、福岡市を抑えての第1位。「本当に住みやすい街大賞2022 in関西」では、なんと西明石が第1位に選ばれました。さらに、2022年の関西の住民実感調査では、「子育てに関するサービスが充実している自治体ランキング」第1位となり、合わせて「住み続けたい駅」第1位に東部の人丸前駅が選ばれました。