支援は「企業」からではなく
「子ども」から始める

 昔は合コンで出身地を聞かれると、明石市民でも「神戸の近くです」なんて誤魔化していたのに、明石もずいぶんイメージが上がったものです。

 神戸で飲んでいると、マスターが「そろそろ独立しようと思ってんねん。店出すとしたら、今はやっぱり西宮北口か明石かな」と言います。ずいぶん驚きました。駅前には高級スーパーが次々に出店し、有名ブランドのお店もできました。つぶれる気配などまったくありません。ミシュランガイドで星つきの天ぷら屋さんの移転話や、新ブランドの「兵庫県初出店・明石にオープン!」といった話も増えてきました。

 根気強く、あたりまえのことを言い続けてきました。

「税金で商店街に立派なアーケードをつけても儲かりません。それではお金は回りません」「市民が使えるお金を増やせば、お店も流行ります」。

 ずっと伝え続けてきました。天動説の時代に地動説を唱えていたコペルニクスの気持ちです。

子ども政策“5つの無料化”で明石市長が「所得制限なし」を当然とした理由いずみ・ふさほ/1963年明石市二見町生まれ。1987年東京大学教育学部卒業後、NHKディレクターに。1997年弁護士、2003年衆議院議員を経て2011年より現職。「5つの無料化」に代表される子ども施策のほか、高齢、障害者福祉などに力を入れて取り組み、市の人口、出生数、税収、基金、地域経済などの好循環を実現。人口は10年連続増を達成。柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。 写真:片岡杏子

 それでも、対立陣営も議会も職員も市民も、みんな口々に「子どもよりも産業振興を」「まずは企業を支援して、景気を上げろ」と言うのです。「景気が良くなったら、給料も上がり、子どもも増える」と。

 かたくなにその順序に固執してきた日本の現状は、経済は上向かず、子どもの数は減りつづけています。

 まずは企業、で終わり。いつまで経ってもお金は一般市民にまで回ってきません。本来、最初に大切なのは「人」のはずです。それなのに、いまだに放置されたまま。政治が最初に見るところも、スタートも違っていたということです。

 支援は「企業」からではなく「子ども」から始める。「子ども施策」は「経済施策」です。子どもを本気で応援すれば、市民の側からお金は回り始めます。人も集まる。まちが賑わう。子どもにやさしいまちは、みんなにやさしいまちになる。子どもたちはまちの将来を担うので、結果としてみんなを支える。みんなが暮らしやすいまちとなるのです。

 次回は『明石市の評判を大改善した泉市長の訴え「あなたの選択が政治を変える」』について紹介します。

後編『明石市の評判を大改善した泉市長の訴え「あなたの選択が政治を変える」』を読む