こんな冷たい社会がイヤなら、首長に立候補すればいい。とりわけ地方の選挙は風向きが変わってきています。全国各地で、政党や業界団体の支持を受けていない、無所属の候補者が「市民の支持」を受けて当選しています。

 あなた自身が立候補しないなら別の方法として、信じられる人を探して、担ぐこともできるはずです。そんな人はすぐには見つからないかもしれない。それでもベターな選択肢を自分たちでつくるその過程も、まちを変えていくことにつながります。

 東京から明石に戻ってきたとき、私もまた、たくさんの友人、知人から声をかけられました。「市長になるんやったら応援するで」。多くの温かい気持ちをいただきました。

 一般市民が応援できる、市民のほうを向いた政治家を増やしていく。そのことが政治を変え、冷たい社会を変える力になる。全部つながっていくのです。

 フランス、イギリス、アメリカ……多くの国が市民革命を起こして、市民が自らの手で民主主義を勝ち取ってきました。

 日本は1度も民衆が社会を勝ち取っていない、世界でも珍しい国です。市民が自分たちの手で社会を変えられると思っていない。世間話で政治というテーマに触れるのをタブー視しがち。政治の現場にいる者から見ると、「社会は自分ではない他の誰かがつくるもの」だと思う傾向が強いと感じています。

 スウェーデンの中学校には「私たちの社会」という副読本があり、国民の権利や義務、コミュニティにおける行政と市民の役割などを教えています。「社会は自らつくるもの」という意識が強く、富裕層向けの減税策が発表されると、格差拡大につながるとして反対デモが起こります。

 私は子どものころからずっと、社会は理不尽で変えるべきもの、変えるのは自分だと強い思いを抱き続けてきました。政治をタブー扱いして、声を上げることもせず、行動を起こさなければ、気づいたときにはもう茹でガエル。国民を見ようともしない政治家の思うツボです。

 投票にも行かず、立候補もせず、候補者も見つけようとしない。

 そんなことを続けていては、冷たい社会はちっとも変わらず、私たちの生活はますます悪くなります。そうなってからでは遅すぎます。

選挙はすでに変わりつつある

 少なくともいくつかのまちではすでに、変化の兆しが見えはじめました。

 近年の選挙では、全国各地で「子ども」が大きなテーマに掲げられるようになってきたのです。子ども医療費の無償化、学校の給食費無償化などを選挙公約に掲げ、候補者同士で競う状況にもなっています。その結果、選挙後に待望の「子ども施策」が実現し始めているまちもあります。