今、「学校に行かない子どもたち」が、とても増えています。小・中学校の長期欠席者は41万人(うち不登校が24万5000人・令和3年度)にのぼり、過去最高を更新しています。本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。

不登校、心の回復ロードマップ(休み始め~休養前期)photo:AdobeStock

休み始め~休養前期に大事なことは?

 ここから、2回に分けて、子どもの状態ごとの関わり方を解説します。それぞれの期間がどれくらい続くかは個人差がありますが、最初にロードマップを知っておくことで、落ち着いて対処できるようになるでしょう。今回は、休み始めから休養前期までを説明したいと思います。

・休み始め~初期
 子どもが「学校に行きたくない……」と言い出す「行きしぶり」が始まります。「最初はしぶっていても、行けば楽しく過ごせる」のか「本当に行きたくない、もう行けない」のかの見極めに悩む場合は、体調・食事・睡眠の様子などを観察してください。

 以前の回でもご紹介したように、腹痛や頭痛を訴えたり、不眠になったり、朝ベッドから起きられなくなったり、ごはんの量が減ったりするのは、なんらかのサインです。「これくらいたいしたことない」と過小に評価したり、「大変なことが起きた」と慌てすぎたりせず、落ち着いて関わるようにしてください。何日か続くようであれば、学級担任や保健の先生などに相談してみるのもよいでしょう。

 子どもの話をゆっくりと聞く時間をつくったり、葛藤や不安を受け止めたりすることが大切です。また、子どもは自分の感情や体調を適切に伝えられないことも多いもの。「今日の『疲れ度』は5段階のどのへん?」と聞いてみるなど、体調や気分について共有しやすい質問をしてみましょう。

・休養前期
 心のエネルギーが涸れてしまい、底すれすれとなってしまうのが、この休養前期です。家族へ暴言を吐いたり、幼児返りしたりする子どもが多く見られます。先生や支援スタッフが家庭訪問に来ても「会いたくない」と部屋に閉じこもったり、昼夜逆転した生活になったりする場合もあります。

 この頃は親御さんも気持ちが振り回され、つらい時期です。子どもが「死にたい」という希死念慮を話したり、自傷行為に及んでしまったりする場合もあり、「もう、どうしていいか分からない」と絶望的な気持ちになるかもしれません。

 こうなると家庭内だけで抱えるのは難しくなってきますので、学校や関係機関と協力体制をつくっていくことをおすすめします。不登校の子どもを持つ親の会などに参加して、保護者が息抜きすることも大切です。本人の興味に関心を持ったり、小さなことでも温かく励ますなどしながら、ゆとりを持って子どもを見守れるとベターです。

(次回に続く)

不登校、心の回復ロードマップ(休み始め~休養前期)

 *本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。