河西邦剛 著, 松下真由美 著
チケットが不正転売されて起きる問題を具体的に考えてみましょう。
まず、とあるアイドルグループのファンであるBは、Tドームで行われるツアーの最終公演に絶対に行きたいと思っていました。しかし、大人気のツアーの最終公演ともなれば、自力でチケットが取れる可能性は限りなく低い。チケットの当落発表日、ファンクラブからBに届いた知らせは、「残念ながらチケットをご用意することができませんでした」…。
チケットは既に売り切れ、正式ルートでは購入することがかないません。友達もみんな抽選に漏れてしまったようで、同行者の枠にもアテがありません。しかし、何とかして手に入れたい、とSNSやオークションを検索すると、喉から手が出るほど欲しいチケットが、数多く販売されているのです! 喜びかけたBですが、その値段に目を疑います。そのチケットは、販売価格の10倍もの金額だったのです。
問題点(1) 本当に行きたい人が行けない
給料をチケット代につぎ込んできたBでしたが、さすがに倍の金額のチケットには手が出せず、泣く泣くコンサートを諦めなければなりませんでした。転売目的でチケットが購入されることで、Bと同じ立場の大勢の純粋なファンが、チケットを購入する機会を奪われてしまうことになります。
問題点(2) 事務所やアーティストに適切なお金が入らない
転売されている以上、チケットは売れているのだから、運営は損をしていないのでは? と思うかもしれませんが、それは違います。
仮にBが思い切って転売チケットを高額で購入したとしても、お金に余裕がなくなったBは、代わりに推しのグッズ購入と、次のコンサートを諦めることになります。
このように、転売はB本人が予想外の出費を被るばかりか、その高額のお金が転売ヤーに吸収され、魅力的なコンサートを作り上げている推しや運営には、全く還元されないのです。
チケットの不正転売が禁止された理由がわかってきたかと思います。
不正転売を禁止し、「チケットの適正な流通を確保」することにより、本当に行きたい人にチケットが行き渡ります。そして、本当のファンが集まることでイベントは大いに盛り上がり、「興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興」につながります。高すぎる転売額での購入をしないことは「国民の消費生活の安定」につながり、推しのグッズなど、本当に使いたいところにお金を使えるようになります。それにより「心豊かな国民生活の実現に資する」ことになるわけです。
ぜひみなさんには、心豊かな国民生活、すなわち、心豊かな推し活ライフを送っていただきたいのです。