原因はたった一つ。ズバリ、背骨。背骨を中心とする間違った体の使い方にあります。「背骨が硬くて、骨盤も股関節もまったく動かない状態で走ってるからケガするんやで!」彼には、繰り返しそう伝えたものです。

「走るのは脚」と思いがちですが、実は全身運動です。「背骨を中心に、骨盤や股関節、胸郭(肋骨)、肩甲骨、肩関節など様々な関節を連動させる」のが本来の体の使い方です。

 そのため、背骨が硬くなって動かなくなると、連動してほかの関節が動かなくなります。その結果、脚だけで走ってしまって下半身に集中して負荷がかかるため、ケガをしやすくなるというわけです。

 事実、Kくんが背骨をねじって動けるようになると、結果的に膝や足首の負担が減って力が一カ所に集中しなくなり、やがて痛みがなくなってケガもしなくなりました。

背骨を動かせば、連動してほかの関節も動きだす!

 日常の歩く・走る動作も、体をねじって背骨を回旋(かいせん)させて動くのが効率のいい体の使い方です。体をねじらない(背骨の回旋なし)で歩く・走ると、『ゲゲゲの鬼太郎』の“ぬりかべ”のように手足だけ動く感じになります。

 ためしに腕を後ろで組んで走ってみてください。うまく走れませんよね。腕が使えないと走りにくく、バランスも取れないし、スピードも出ません。胸郭が動いて肩甲骨も動けば、腕が振れてスピードも出るようになります。

 中学時代のKくんも、背骨が動かないから胸郭が動かない、胸郭が動かないから肩甲骨も動かない、肩甲骨が動かないから腕も振れない、だからスピードも出ない、という状況に陥っていました。

 ランナーが「脚を動かすより、腕を動かせ」とよく指導されるのは、腕を動かせば脚も動くようになるからです。腕(手)と脚をつなぐのが背骨です。背骨のトレーニングをして、背骨がしっかり柔らかく動くようになると胸郭や肩甲骨が動くようになり、腕を振れるようになってスピードも出るようになりました。

 私はこれまでスポーツトレーナーとして、プロスポーツ選手や、高校・大学・実業団などのチームから、一般の方まで、病院や治療院で治らないケガや症状で苦しむ約3万人以上の治療やトレーニング指導をしてきました。