5類移行後も必要なワクチン接種は
引き続き自己負担なしで受けられる

 個人の医療費負担で、もうひとつ気になるのが、COVID-19のワクチン接種にかかる費用だ。

 予防接種には、

 (1)予防接種法で規定されている「定期接種」「臨時接種」「新臨時接種」
 (2)インフルエンザ特別措置法で規定されている「特定接種」「住民接種」
 (3)予防接種法に規定されていない「任意接種」

 がある。それぞれ、国のワクチン政策上の目的に応じて、実施主体や接種対象者、接種勧奨、費用負担などが決められている。

 たとえば、5類感染症に分類されている季節性インフルエンザは、予防接種法では「定期接種(B類疾患)」に分類されており、実施主体は市町村だ。接種費用は、接種を受けた人が自己負担することになっている(ただし、多くの自治体では、65歳以上の高齢者や子どもなどを対象に、接種費用の助成を行っている)。

 一方、COVID-19の予防接種は、まん延防止の観点から緊急性が高く、重症化リスクの高さなどから、2020年12月2日に成立した「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律(改正予防接種法)」で、「臨時接種の特例」に位置づけられた。

 通常、臨時接種の実施主体は、都道府県や市町村だ。しかし、COVID-19は、国民の健康や生命、社会経済に大きな被害をもたらしている。この国で暮らすすべての人が、円滑にワクチンを接種できるようにするために、国主導で接種事業が進められてきた。接種費用や医療従事者の報酬についても、全額、国が負担しているため、だれでも無料で受けられる。

 ただし、無料で接種できる期間は、2023年3月末までとなっており、今後の接種方針が厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会基本方針部会で、協議が続けられてきた。

 1月26日の会合では、多くの専門家から、接種期間の1年間延長を求める声が上がっており、希望するすべての人が接種できる体制が望ましいとされた。

 前出の国の「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について」でも、COVID-19のワクチン接種について、「必要な接種については、引き続き自己負担なく受けられるようにする」としている。

 5類への移行後も、当面は、すべての人が無料でワクチン接種ができる措置が継続しそうだ。ただし、COVID-19も流行が収束し、重症化リスクがさらに軽減されれば、将来的には定期接種に見直すことも検討されている。

 COVID-19が5類に移行する5月8日以降、緊急事態宣言の発動はできなくなり、外出自粛や休業などの行動制限もなくなる。人の往来は増え、自由にイベントやスポーツ観戦もできるようになる。社会経済活動は徐々に活発となり、コロナ以前の日常へと戻っていくだろう。

 ただし、ここで見てきたように、個人の医療費負担については、段階的に見直されることになっている。将来的に公費負担が停止されても、公的な医療保険(健康保険)が利用できるので、高額な医療費を全額自己負担するという心配はない。

 5類移行によって「変わるもの」と「変わらないもの」を見極めて、少しずつコロナ後の日常を歩む準備を始めたい。