「この会社が好き」といえる組織でありたい

 上場における最後の難所、それが「引受審査」と「上場審査」の上場審査だ。前者は主幹事証券会社が審査し、後者は証券取引所による公開審査となる。証券取引所の審査は事業内容やマクビーのビジョン、業績の進捗状況など細々とした内容が問われるのだが、ときには周囲の手を借りながら、ぼくはそれらを着々と進めていった。ぼくがやれるだけのことはすべてやり、あとは運命に托すだけだ。運命というのは、人間のはるか及ばないところで大きな力が働いて決定しているのかもしれない。しかしぼくは、人間は、その大きな流れを自分の力で引き寄せることができると信じている。

 この時期によく考えたのが、マクビーの社員ほど「自分の会社が好き」と言えるビジネスパーソンがほかにいるだろうか?――ということである。たしかにクセの強いメンバーが集まっているが、マクビーに対する愛着はみな一致しているようだった。短期間で“爆速成長”を続けてきたのは、どんな局面に際しても組織として揺るがないだけの確固たる土台があったからであり、メンバーの一人ひとりにマクビーを好きだという気持ち、この会社でずっとやっていきたいという強い気持ちがあるからではないか。だからこそ、最終的にはマクビーの全員が上場という目標に向かって突き進んだのだろうと思う。

 そして2020年3月31日、マクビーは東証から承認を受け、創業から4年、ぼくが上場請負人として入社してかから1年半で東証マザーズに上場を果たした。もちろん、マクビーの上場は通過点に過ぎない。これからマクビーの第二章として、さらなる成長と可能性を求める新しい物語が始まるのだが、ひとまずぼくの役割は終わった。マクビーの公募価格1830円のところ、2348円の初値を付けた。そして、2022年12月に年初来高値の11850円となっている。

これから進む道

 2021年12月14日に開かれた定時取締役会で、ぼくが二代目の代表取締役社長に就任することが決議された。上場を達成した時点でミッションを完遂したと考えていたぼくが、なぜ二代目社長に就任したのか。ぼくは上場後、株式会社Alphaの子会社化や、同じく子会社として株式会社Smashの設立に携わり、ほかにもマクビーがさらに成長するための施策にさまざま取り組んだ。二代目代表抜擢に至る具体的な経緯はここでは割愛するが、つまるところ、これまでより多角的に会社を成長させなければいけない局面に入ったマクビーの舵取りをメンバーがぼくに托してくれたということであり、そのことをとても嬉しく思っている。

「上場を達成する人」であったぼくは、この会社で素晴らしい仲間に出会ったことで、しだいにマクビーをともに飛躍させていきたいと考えるようになっていた。最初のうちは、心のどこかに「自分は“外部の人間”として見られている」という意識もあった。だからこそ、社長就任に期待を寄せてくれた仲間たちにあらためて感謝したい。

 さて、マクビーはこれからどのような道を進むべきなのか。はっきりしていることは、「現状維持」を続けているだけでは、上場した意味がほとんどないということだ。マクビーは「次世代の日本をつくる」という大きなビジョンを掲げているが、そのためにすべきことは計り知れない。ぼくは社長としてマクビーを発展させるために、既存のサービスとグループ経営の強化を図り、新たな分野にチャレンジする攻めの姿勢を貫きたい。そして、各メンバーが年齢やキャリアに関係なく、個性を生かして自由に行動し、楽しみながら輝ける場でありたい。さらに、時価総額1000億円、売上1000億円、社員平均年収1000万円の、「トリプル1000」の実現を目指している。株主、クライアント、そして社員、各ステークホルダーが幸せになるような持続可能性の高い社会的な企業でありたい。

 そんな思いをもって、ぼくと仲間たちは今日もマクビーにいるのである。