売上失速!上場直前の最大の危機をどのように乗り越えたのか?

2015年に創業し、その後わずか4年という短期間で加速度的な成長を遂げ、まさに“爆速”で株式上場を果たしたマクビープラネット。傍目にはすこぶる順調に成長したと見られているが、実際はそんなことはなく、実は上場の直前に大きな危機を迎えていたのである。マクビーを襲った危機とは何か? 彼らはそれをどのように乗り越えたのか? そして、上場を実現した彼らが目指すものとは?――本連載では、『ぼくがマクビーにいる理由』の著者で同社代表取締役である千葉知裕氏が、上場の「舞台裏」から現在のマクビーに至る一連の軌跡を語る。

最大の難関を乗り越えて

 みんなのアシストを受けたぼくは、絶望の底から上場の準備に邁進していった。だが、ここにきて抜き差しならない大問題が発覚する。2019年11月、上場まであと4カ月という時期になって、会社の売上と粗利を管理しているシートをチェックしていると、見込み数字と実際の数字が合っていないことに気がついた。この管理シートからは細かく精査できなかったが、全体的に下降をたどっていて、明らかな異変を感じる数字の動きだった。

 たとえ上場の申請書が審査をクリアして上場承認を得ても、上場時の株式数の見込みや時価総額の見込みが基準値を下回ったり、コンプライアンス違反が発覚したりということで承認が取り消されてしまう場合がある。マクビーの売上減少の原因は、売上の多くを占める大手企業のリスティング広告が完全な赤字取引になっていたからだった。さらにはその企業が契約見直しを考えているという四面楚歌の状況に陥っていたのである。調べてみると、あまりにも真面目な営業部のメンバーが、「上場前にメンバーの足を引っ張りたくない」という思いから、ひとりで対応に苦慮していたことがわかった。

「こんな状態で、上場できるのだろうか」――この時期においては、メンバーの全員が近づく上場を意識しはじめていて、そんな不安が社内に蔓延しているかのようだった。上場は、もはや一部の役員が掲げる夢ではなく、マクビー全員の目標になっていた。そんな矢先のトラブルだった。

 その営業部のメンバーと話すなかで、ぼくは「どうすればいいでしょうか」と直接尋ねられたが、恥ずかしながらなにも気のきいた言葉を返せずに、「大丈夫、つらいけど頑張ろう」とだけ答えた。でも、これはけっこう真理だと思う。どんなに辛いことが起こっても、前を向いてただ努力するしかないのだ。努力したからといって、それが報われるほど上場は甘くないが、それは「頑張る」をやめる理由にはならない。マクビーのメンバーはこの危機的な状況において、それぞれの方法で努力を続けていた。奇跡をただ待つよりも、努力したほうが目指す未来に近付けることを知っているのだろう。ぼくはある夜、営業部門を支えるメンバー社員の何人かが集まって話しているのを偶然見てしまった。彼らが一様に「やるしかないよね」と前を向いていたのが印象的だった。

 結果としてマクビーは、どん詰まりの状態から奇跡の大逆転を果たし、大口クライアントの失注を免れることができた。メンバーそれぞれが喜ぶなかで、ぼくはマクビーに関わる全員が上場という一つの目標に向かって突き進んでいる熱気を痛感した。