出生率の算定式は、(1)女性が結婚したかどうかと、(2)女性が結婚した後に、子どもを何人産んでいるかということに分解できる。前述した、資料内に提示してある「二つの図」で数字の推移を見ると、日本では未婚率がどんどん高まっていく一方で、結婚した後で何人子どもを産むかについては(微減しているが)ほとんど変わっていない。
このデータから導き出される結論は、少子化対策で最大の効果を狙うなら、子育て世帯を支援するよりも未婚者にもっと結婚をしてもらうしかないということだ。
少子化対策の手本だったフィンランド
出生率が急落していた
このデータを理解していれば、赤川学・東京大学大学院教授の「少子化の原因を分解すると、結婚しない人が増えていることの効果が9割を占めている」(日経ビジネス電子版、22年10月23日)という指摘も非常に納得できるはずだ。
欧米でも日本と同じように、「子育ての障害」となるようなお金の問題、休暇の問題、女性の待遇ばかりが議題として噴出し、効果のない少子化対策が繰り返された。とりわけ、そんな子育て支援先進国であるフィンランドの出生率は、10年には1.87だったがこの10年余りで急落。19年には過去最低の1.35にまで落ち込んだ。20年には微増したが1.37と、日本の1.34と大して変わらない状況だ。
子育て支援をすればするほど税金や社会保障による国民負担が増し、家計に打撃を与える。お金の問題で少子化が進むというのであれば、子育て支援に投じる税金の財源は高齢者のみに求めるしかないが、そんなことを自公政権がするはずもない。結局、現役世代への増税となって返ってくるだけであろう。であれば、岸田政権による意味のない少子化対策は、未婚率を下げ止めることなく、国民負担をただ増やすだけだ。金銭的事情で結婚をためらう人は増えてしまう。故に、コロナ禍で極端に減った出生数は短期的には多少の回復を見込めるかもしれないが、少子化はさらに進むことになる。
統一地方選挙を前にして、「異次元」なる言葉の下、与野党がバラマキ合戦を始めた――そんな現状は、国の経済成長にとっても私たちの家計にとっても悪夢でしかない(バラマキを勝ち誇る公明党の選挙ポスターが町中に張り出されるのが目に浮かぶ)。
「異次元の子育て支援」の恩恵を受けることになる子育て中の親からすれば、以上のことは受け入れ難い話だろう。しかし、自分たちが受け取った恩恵のツケは、今あなたの下で育っている子どもが払うことになる。果たして、それで本当にいいのだろうか。
国会議員、そして国民は、もう少し冷静になって考えてほしいところだ。