「子どもがいる夫婦」だけの支援では
少子化対策につながらない理由

 2022年11月18日付の日本経済新聞電子版に掲載された調査結果によれば、「子どもが減っている理由は何だと思いますか」との問いに対する答えは「家計に余裕がない」「出産・育児の負担」「仕事と育児の両立難」が上位を占めた。

 また、「結婚はした方がよいと思いますか」との問いに対し、30代女性のわずか9%が「そう思う」と回答した。結婚が減っている理由は「若年層の低賃金」「将来の賃上げ期待がない」などが上位を占めていた。

 要するに、経済的な理由で、結婚したいのにできないでいる人たちや、結婚しても子どもを持てない人たちが多くいる。これが日本の「少子化問題」の本質だ。

 だが前述の三本柱では、「既に結婚して子どもがいる人たち」だけを支援の対象とし、未婚や子どもがいない人たちは支援の対象外としている。

 つまり、三本柱は本当の意味での「少子化対策」ではなく、子どものいる家庭の生活をサポートする「子育て支援策」にすぎない。

日本で少子化問題が深刻な一因は
「日本型雇用システム」だ

 日本で少子化問題が深刻なのは、日本特有の問題がある。今でこそ女性の社会進出が進んでいるが、かつての日本では結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い、パートなどの非正規雇用になっていくしかなかった。いわゆる「日本型雇用システム」だ(第269回・p3 )。

 その実態は、データで見るとよく分かる。「女性の年齢別労働力率」をグラフ化すると、学校を卒業した20代でピークに達し、その後30代の出産・育児期に落ち込み、子育てが一段落した40代で再上昇する。いわば「M字」に似た曲線となるのだ(参考:男女共同参画局の「年齢階級別労働力率」のグラフ)。

 30代女性の労働力率が低下する「M字の谷」現象は、日本や韓国に特徴的な現象だ。欧米諸国などでは、一定の年齢層で労働力率が下がらず、女性の働き方に対して柔軟性が高いので「M字の谷」はない(参考:男女共同参画局の「主要国における女性の年齢階級別労働力率」のグラフ)。

 確かに、日本でも安倍政権以降に打ち出された女性の社会進出を促進する政策によって、「M字の谷」が緩やかになった。今では「台形」に近づきつつある。だが、それは「未婚」のまま働き続ける女性や、出産などを機に非正規雇用として働く女性が増えた結果だ。正規雇用の女性が爆発的に増えたわけではない。