女性が正社員になれない
日本の「あしき風習」

 男女共同参画局がまとめた「男女共同参画白書」によると、2021年の時点で専業主婦世帯数は458万世帯(28.0%)、共働き世帯数は1177万世帯(72.0%)と、後者が圧倒的に多い(いずれも妻が64歳以下の場合)。

 だが、21年時点の労働力の内訳を見てみると、正規雇用は男性が2334万人に対し、女性は1221万人。非正規雇用は男性が652万人に対し、女性は1413万人となっており、本当の意味での「女性活躍」には程遠いことが分かる。

 こうした現象が起きる要因も、先述した「日本型雇用システム」によるものだと考えられる。

 年功序列・終身雇用を前提としたこのシステムでは、一度離職した女性が幹部になるのは難しい。日本における離職は、組織内における同世代の「出世争い」からの離脱を意味し、一度離れると二度と争いに復帰できない。

 ゆえに、数年のブランクのある女性は正規雇用での職場復帰は難しく、正規雇用での中途採用枠も極めて狭い。

 一方、欧米諸国の企業や官僚組織は、基本的に年功序列・終身雇用ではない。新卒の一括採用は少なく、組織が必要とする業務について人材を募集する。

 マネジャーや幹部職も公募で決まる。内部昇格が行われるのは、外部から応募してきた人材と公平に比較・検討され、内部の人材が優秀と判断された場合のみである。

 欧米でも、女性が結婚・出産で離職することはもちろんあるが、キャリアアップのハンディにはならない。離職前の経歴をアピールすれば、それに適したさまざまなポジションを獲得できる。

 世界的に見れば、女性の政治家や企業経営者・幹部、学者には、パートナーを持ち、出産・子育てを経験している人が多い。企業の管理職における女性の割合が、わずか14.9%の日本とは大きな違いがある(参考:男女共同参画局がまとめた「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」)。

 表面上は、日本企業でも産休・育休制度が普及し、一度現場を離れた女性(育休の場合は男性も)が正社員として復帰できる体制が整っている。

 だが、日本型雇用システムの名残なのか、復帰した人が周囲になじめなかったり、子どもの送り迎えなどで仕事を中抜けする人が白い目で見られたりといった「あしき風習」は今も企業に色濃く残っているようだ。

 政府は「対症療法」に終始するのではなく、少子化問題の根本原因である雇用慣行の是正にこそ、「異次元」の投資をするべきではないか。

 そこで本稿では、本質的な少子化対策として「ファミリーの所得倍増計画」を提起したい。あえて「倍増」とした理由は、妻が正社員として働き、夫と同程度の給料を得られるようになれば、単純計算で世帯年収が倍増するからだ。

 実現はそう簡単にできることではなく、さまざまな課題を乗り越えなければならないのは確かだが、その第一歩となる案を示していきたい。