資格を通じて志望業界の業務内容を先取りする
加えて、資格・検定は、「新しいことに挑戦するきっかけ」「同じ志向を持つ仲間づくり」や「人生に深みを持たせる」ための優れたツールだと私は考えます。決して、就活や仕事のためだけに取得するものではありません。
とはいえ、学生が社会人となるために欠かせないステップである就活に有用であることは事実です。就活を契機に資格や検定を取得し、これらを軸に企業と自分をつなぐストーリーをつくり、自分の特技・強み、志向、人物像を積極的にアピールしていただきたいと思います。こんな資格を持っている自分はどのような価値観を大切にしているのか、そして、企業や社会にどのような貢献ができるのか。
こうしたストーリーを構築するには、先ほど挙げた秘書検定の例から一歩進んで、志望する業界や企業に関係の深い、あるいは就職してから必要とされるであろう資格や検定を調べ、それらの勉強から始めてみるのが王道です。
企業説明会の段階で採用担当者から「取っておいたほうがいい資格」についてアナウンスされることはまずありませんが、内定が出たとたんに「入社までにこの資格を取っておいてね」と指示されるケースは少なくありません。
ですから、OB・OG訪問の際には仕事の内容や職場環境を尋ねるとともに、入社後に取得を奨励される資格や検定の情報もぜひ聞いておいてください。企業で求められる資格・検定を学生時代に取得していることは志望の本気度を示すアピールになりますし、入社後の精神的なゆとりにもつながります。
まれに「資格を持っていても実務経験がないと意味がない」と言う人もいます。しかし、社会人ならともかく、実務経験がなくても学生のうちから資格や検定の勉強を通して業界のことが垣間見えているということは、入社後に大きなアドバンテージとなります。
例えば、商社やメーカーなどで貿易に関わる仕事に就きたいと思うなら、通関士(国家資格)、あるいは、貿易実務検定の勉強をすることで、取引の際に理解しておくべき条約や規制、業界の現状、経済・金融知識など、実務レベルの情報まで得ることができます。漠然としたイメージではなく業界や実務が具体的に見えてきますから、より深く業界や企業を理解できるのです。
資格の勉強を通じて業界研究を進めているうちに、もし、「業界に抱いていたイメージと違う」と感じた場合、どこにどんな違和感を覚えるのかを深掘りしていくと、自分の価値観や志向が次第に明確になってきます。つまり、資格の勉強は自己分析にもつながります。入社後にこんなはずではなかった、というミスマッチを避けるためにも、志望する業界の資格・検定に向けた勉強をしてみることには、大きな意味があります。
ここで一つ強調しておきたいのが、資格・検定の受験を考えるにあたっては、「試験スケジュールの確認」を早い段階で行うべきであるということです。
資格によっては年に1~2回しか試験が実施されない場合があり、それに合わせた計画や準備を進めていく必要があるからです。勉強自体に意味があるとはいえ、就活本番までに資格を確実に取得しておきたいのであれば、試験日や合格発表日が採用試験のエントリーに間に合うよう受験プランを組むべきです。