99年にルノーが日産に出資した時は保有比率が36.8%で6000億円を出資したが、その後02年に比率を引き上げるとともに(現在は43.4%)、反対に日産がルノーに15%出資して現在の資本関係へと続いた。16年には日産が三菱自に34%出資したことで、親・子・孫の資本構成による3社連合に至った。

 だが、ルノーは筆頭株主が15%出資しているフランス政府であることから、同社の動向には国策的な意向が常に見え隠れしてきた。ゴーン氏の長期政権による歪みだけでなく、仏政府による「日産統合提案」が19年のゴーン氏の突然の逮捕という出来事の前後にあった。これに対し、日産はルノーによる統合吸収を避けるために、三菱商事がルノー保有株の半分を買い取る案や、ホンダとの提携をひそかに狙ったこともある。

 日産としてはルノーが持つ日産株が43%なのに対して、日産側は15%しか持たない。しかも、仏商法で日産が持つルノー株の議決権は実質的に無効という資本関係は不満だった。ルノーと日産のアライアンスの根幹を成す「RAMA(改訂アライアンス基本契約)」は、日産株主総会でも「不平等なアライアンス状況が改善されないのはRAMAの内容の是非が株主間でも議論に付されていないから」だとして、全面開示を求める議案が提示されたほどだ。

 つまり、日産側はかつての窮状を助けてくれたルノーに恩義はあるが、「ルノーのEV新会社に出資するなら現在の資本関係も対等にするチャンスだ」として交渉が進められた、というのがこの間の経緯である。