お礼に心を尽くさなければならないのは、もちろん会食にかぎりません。基本的に、頼みごとをしてタダですむということは世の中にはないと思ってください。何かを頼んだ相手が動いてくれたら、たとえそれが叶わなくても、食事を奢ったりシャンパンを贈ったりということを忘れてはならないと思います。
息子さんのことで頼まれごとをしたお母さんからエルメスのスカーフをいただき、それを包みなおして自分がお世話になった方にまわしたこともあります。九州の産物をもらったら、お世話になった北海道の人へ贈る。逆に北から南へとか……。「地球上で感謝の気持ちをまわす」ことだって、SDGsの一環と考えられなくもありません(違うか)。
人に物事を頼むということは、大きな責任を伴うということを忘れないようにしたいものです。
品性が試される時その2
紹介後のモヤモヤに「3回ルール」
もう1つ、ちょっと気になることがあります。紹介して引き合わせたばかりの人たちが私が知らないうちに何回も会って距離を縮めていると、「聞いてない!」と思ってモヤモヤしてしまうのです。
「いろいろと心が狭すぎる」「成熟なんて程遠いじゃん」という声がそろそろ聞こえてくるような気がしますが、「こういうことで腹を立てる人もいるんだから、成熟したいと思う人は気をつけようよ」という話だと思ってください。
先日もこんなことがありました。
Aさんに大金持ちのBさんを紹介しました。ちなみに、Bさんを紹介したその会食は私がご馳走しています。それ以降、AさんはBさんと何回も会ってグイグイ仲よくなっていったのです。しばらくしてAさんが「最近、Bさんと随分親しくしているんだよね」という話をしていたと別の人から聞き、「それって私が紹介したんだけど……」と心がざわつきました。
『成熟スイッチ』(講談社現代新書)林真理子 著
そしてある日、某社のトップCさんから「AさんがBさんと仲よくなったらしくて3人で食事をするけど、来ない?」と誘われます。「AさんにBさんを紹介したのって私ですよ」と言いかけましたが、ハッとして言葉を呑み込みました。よくよく思い出してみれば、大金持ちのBさんを私に紹介してくれたのはCさんだったのです……。
こうしてまとめてみると、ちょっとした小噺のようですね。本章の冒頭で「やってあげたことはいつまでも覚えているけれど、やってもらったことはすぐに忘れる」という法則に触れましたが、人に人を紹介するということも、見事にこの法則に準じていることがよくわかります。
「人にされて嫌だと思ったことはしない」のが私の矜持です。そのために自分に課しているのが「3回ルール」というもの。その内容は基本的に「紹介された人と3回会うまでは、紹介者に報告する」ということ。4回目以降は、断りなく会って差し支えないというルールです。
3回どころか数十年を経ても、大事な局面では紹介者にお礼を言う必要があります。宮内義彦さん(オリックスグループ前CEO)を日大の顧問にお迎えする際も、20数年前に宮内さんを紹介してくれた奥谷禮子さん(元ザ・アール会長)に「ご縁を繋いでくださって感謝します」と、しっかり仁義を切りました。
人を紹介するという行為には、人間関係の繊細な部分が絡み合っています。紹介してくれた人への配慮を常に欠かさないようにしたいものです。
ちなみに私のマイルールをあと2つお教えしましょう。「その場に招待されていない人がいた場合に、『このあいだは楽しかった』などと言わない」と「もらいものは2人になった時にお礼を言う」。――人間関係のルールは案外、根本のところでは子ども時代とさほど変わらないものなのかもしれません。







