お礼状をまめに書く人になるためには、まず形から入ること。私は鳩居堂で季節ごとに便せんを揃え、春・夏・秋・冬と書いた封筒に入れて分類しています。そしてお気に入りの万年筆を用意する。書きたくなったらすぐに手紙を書ける態勢から整えます。

 お礼状の文面は短く、ごくありきたりでいいと思います。一文だけ自分らしい文章が入っていたりすると、なおいいですね。

 手書きの礼状を送ること自体を楽しめるようになると、もうこっちのものです。

感謝の流儀その2
お返しは独自のテリトリーから

 さて、目上の人から、けっこうなご馳走になってしまった場合、どのように感謝の気持ちを伝えたらよいでしょうか。値段も格もとても高い店だったり、まともにお返ししようとすることが無理だったりする場合です。

 そんな時は、前述のとおり自筆のお礼状は必須として、私がおすすめするのが自分の出身地の名産品をお返しに贈ることです。

 私もよく山梨の桃や干し柿を贈ります。お礼状には「地元のもので恐縮ですけど……」と書き添えておく。あたたかみも感じられますし、こうしたお返しの仕方はとても好感度が高いと思います。

 東京出身の人なら、自分の近所にある、知る人ぞ知る名店の品などでもいいでしょう。あるいは、旅先で知ったおいしいものを「休暇で訪れた先で、とても美味しかったので」と贈ったり。覚えておきたいのは、東京のお金持ちに銀座の和光のお菓子を贈ってもあまり意味がないということ。「独自のテリトリーで見つけて自分がよいと思ったもの」を贈ることが重要です。

 関連することでは、お店に招待してもらった時に、誘ってくれた人も初めて行く店で、「本で見て知りました」なんて言われると少しがっかりします。可能であればの話ですが、人をお店に招待する時には、人気店でもまずは自分で訪れて雰囲気もわかってからの方が望ましいでしょう。

 お返しの話でつけ加えると、やはり花をもらって嬉しくない人はいないのではないでしょうか。ある会食の場を取り持ったお礼に、若手の女性作家からとてもセンスのいい花のアレンジメントが届いた時には「さすがだな」と感心しました。常日ごろからお世話になっている人になら、毎年のお正月に大きなお花を贈るのもいいと思います。