動くピクミンの比類なき癒やし効果
プレミアが付くグッズも…

　次いで、『ピクミン』の面白さの二つ目、“癒やし要素”についてである。
 
『ピクミン3 デラックス』は映像がきれいである。ステージは、地球の自然があふれるどこかという趣で、主人公たちのサイズがとても小さいので、ちょっとした空き地を走り回ることが大冒険に映る。これにゆったりした音楽が流れているので、おおむね平和な気持ちでステージ内を散策できる。
 
　そして何より、ピクミンたちがかわいい。これは本当に、非常にかわいい。しかし「ピクミン」で検索して出てくるピクミン画像は、ピクミンのかわいさを十分には伝えていない。
 
　ピクミンのかわいさの神髄は、ゲーム内で動いている彼らに宿っているからだ。

　小さいピクミンたちが隊列を成して、あるいは協力し合って目的の物を一生懸命運んでいる姿は、当世風に言うなら“尊い”。油断するとすぐ溺れたり、敵に食べられたりしてしまうはかなさがある。さらに自然界の厳しさの中に生きるピクミンという存在の心もとなさが、その尊さを一段階上に押し上げている（なお、ピクミンがたくさんいるとはいえ1匹でも死んでしまうのは結構ショッキングであり、「1匹も死なせないでクリアを目指す」という高難易度プレイを自分に課しているユーザーも少なからずいるようである）。
 
　そして、ゲームを通してピクミンというキャラクターが好きになり、現実世界で売られているピクミングッズを見てみると、そのかわいさに驚愕する。ピクミンのグッズはほかのゲーム関連のグッズに比べてもおしゃれに仕上がっていて、そのせいか品切れ後のアイテムは軒並みプレミアが付いて、元から転売目的で仕入れが行われたのか知らないが、定価の1.5～4倍くらいで取引が行われているようである。
 
　ただ最後に、『ピクミン3 デラックス』への残念な点をちゃんと書いておきたい。
 
　まず、ストーリーモードのボリュームが少ない。「えっこれで終わり？」という感想の、量と内容である。世界観もキャラもかわいいのだが、ストーリーにのめり込む前にあっけなくゲームクリアとなる印象である。
 
　また、世界観の掘り下げも、期待している人には物足りなく感じるかもしれない。「ディストピア風」、あるいは「現実世界の近所の空き地で実は起こっているメルヘン風」なのだが、そのあたりの想像を楽しく刺激してくれるような描写はあまりない。7月発売予定の『ピクミン4』ではどうなるか――。
 
　段取ることの難しさ・楽しさを、ピクミンという癒やしの道具立てを介して遊ぼう――これが『ピクミン3 デラックス』というゲームの全容である。何かの局面で段取りにこだわったことがある人は、ハマるポテンシャルを十分に備えている。体験版ではミッションモードもステージが1つだけ遊べるようなので、ぜひ試してみるが吉である。