理不尽なクレーマーには
組織的・段階的にじっくり対応
本書で取り上げられているのは、いわゆる「モンスタークレーマー」への対応だ。
行政側に明らかに否がある場合は、真摯(しんし)に受け止め、原因究明と改善に努めるべきだが、必ずしもそうではない場合もある。そんなとき、公務員はどんな対応を取るのか。
窓口で怒鳴り散らすなど、相手が感情的になっている場合は、段階を踏んでじっくり対応する。第1段階では一般職員である担当者が対応するが、ここではシャットアウトしたり、逃げ出したりせずに話を聞く。
ある程度時間が経過すると、「このままでは帰らないな」ということがわかってくる。そして、同じようなやり取りが繰り返される「こう着状態」に入ったタイミングで、第2段階へと進む。
第2段階は、担当者の上司である係長の出番だ。係長は場数を踏んでいるので、「そろそろかな」と思われるときに「お客様、どうされましたか」と、後ろから出てくる。そして、事実を確認しながら、相手をクールダウンさせようとする。これで解決する場合もある。
しかし、理不尽なクレーマーが相変わらず無理なことを言ってくる場合には「それはできません」といった、火に油を注ぐ言葉を使わざるを得ない。そうすると、局面は再びこう着状態に陥る。そこで第3段階へと進む。
第3段階では、係長が課長にヘルプを要請する。課長は第2段階と同様に、「お客様、どうされましたか」と言って窓口に出てくる。
ここからが面白い。ここまでくるとクレーマーも疲れてきているため、「そいつに聞け」と言って、第1段階の担当を指差したりする。
それでも課長は「いえいえ、私も初めて事情をお聞きしますので、お客様からお話し願います」などと言って、無理矢理にでも話をさせようとする。すると、クレーマーもさすがに嫌になって引き下がる、というわけだ。
このように組織的かつ段階的に、時間をかけて相手の気力をそいでいくのだが、各段階で対応した3人が「聞くだけで、ほとんど何も特別なことをしていない」ことに気がついただろうか。
新人ならまだしも、何度か場数を踏んで慣れっこになった職員であれば、「またか」とそれほど精神的な負担を感じずに、のらりくらりと対応できる。
読者諸兄も、事前にこうした対策を準備しておけば、モンスタークレーマーに対する恐怖や不安、徒労感などのネガティブな感情を抱かずに済む。心を乱すことなくその後の仕事をこなせるはずだ。