日本特有の“ハラスメント教育”が元凶?

 では、なぜ日本の子どもは幸せそうじゃないのか。いろいろなご意見があるだろうが、個人的には、日本特有の“ハラスメント教育”が元凶だと考えている。

 日本では「子どもを自由にのびのび、個性を尊重して育てる」ということを建前としてはよく言うが、本音ベースでは「そんな風に育てたらロクな大人にならないぞ」と言わんばかりに、自由も個性も否定しがちだ。

 事実、物心ついた頃から家庭や学校で「ルールを守れ」ということを教え込み、「みんなのことを考えろ」と同調圧力を叩き込んでいる。そして、もし自分勝手な行動をしたり、集団の秩序を乱したりすると「痛み」でわからせるという大人もまだ存在している。殴ったり、蹴ったり、グラウンドを走らせたりという「折檻(せっかん)」が「愛のある体罰なのでセーフ」と奨励されてきた過去があるからだ。

 そんな日本のハラスメント教育の象徴が、「制服」だ。

 貧しい家庭でもありがたいとか、もっともらしい理由をつけているが、本質的なところでは、私服よりも没個性の制服の方が、親や教師という大人側が「管理がラク」というだけだ。制服は青春の象徴だ、みたいな話も大人のノスタルジーに過ぎず、「子どものため」を考えたルールではない。

 また、授業以外でも徹底的に「個性」を殺して、集団への貢献を誓わせる。わかりやすいのが、運動会の集団体操や人間ピラミッドだ。あれに感動している保護者は、マスゲームで熱狂している北朝鮮の人民と自分たちが何も変わらないことに気づいていない。

 世界的にも珍しい「ブラック部活」も同じだ。海外では、スポーツなどの課外活動は自分の意志でやりたい子どもだけが参加して、1年の中で活動する期間が決められている。日本のように、朝から晩まで週6日部活で、子どもが疲労でフラフラ…なんてバカな話は少ない。よく言われる「部活で苦しい経験をしたから今がある」という話も、大人たちが自分の受けたハラスメントを正当化しているだけだ。

 しかも、ただスポーツをやるだけではなく、髪型がどうしたとか、声が小さいとか、礼儀作法やら精神論も叩き込まれる。これはあまり言われないが、軍隊的な集団教育だ。