ここで重要なのは、最初のお客さまと同じように価値を感じてくれる人たちが、いったいどこにいるのかを見つけだすことです。1人目のお客さまと同じ便益と独自性に価値を見いだす可能性のあるお客さまは、必ず複数見つかります。その複数のお客さまの仕事や生活スタイル、居住環境、趣味、情報を入手する方法、メディアやSNSをはじめ属するコミュニティやプロダクトの入手経路(販路や小売環境)は多様ですが、決してまったく異なることはありません。その多様性の中に、共通項を見つけだし、同じ価値関係の新しいお客さまになっていただくのです。そこから購買単価や頻度が上がるお客さまも出てきます。
「1→10」の段階でもう1つ重要なのは、「0→1」の段階では見えていなかった異なる複数の「WHOとWHATの価値関係」が成立しており、ここに新しい成長の機会が生まれることです。「0→1」の段階の価値関係にとらわれてしまって、お客さまを合計の数字、平均の購買頻度、平均の購買単価などで把握して、一緒くたにとらえて、その多様性が見えなくなると、この成長機会を見逃します。
「1→10」の段階で、まずやるべきは「(0→1の)最初のお客さまが、なぜそこに便益と独自性を感じたか」を知ることです。「0→1」の1人目のお客さまを深く理解し、同様な潜在的なお客さまは誰なのか(WHO)、そのお客さまが価値を見いだす便益と独自性は何か(WHAT)を仮設としてどれだけ具体的に定義しているかで、その価値関係を実現する手段や手法(HO W)の投資対効果も変わります。
実行したHOWが、仮説とした「WHOとWHATの価値関係」にどう影響したのかを検証すれば、有効なHOWを見極めることは可能で、より効果的なHOWの検討も可能です。逆にいえば、WHOとWHATの定義があいまいなままの手段や手法(HOW)は、宝くじを買うがごとく再現性がありません。仮にうまくいったとしても、誰が買ったのか(WHO)、なぜ買ったのか(WHATとしての便益と独自性)が見えないままでの手段や方法(HOW)への投資では、ムダな投資が増え、継続的な収益性の向上につながりません。